１７７話自己暗示２ ページ8
カステーロは、宿舎に戻る前にまた雰囲気が戻った。
暗示が解ける期間は非常に短く、慣れていないようだった。
だけど黙って俺についてきているあたり、大丈夫だろう。
「フィディオ、ちょうどいいところに来た……っ！」
ラファエレは俺宛ての小包を渡そうとした時、俺の後ろにいるカステーロを睨みつけていた。
「あぁ、ありがとう」
俺はそのことに言及はせず、ラファエレから受け取って自分の部屋に戻った。
その際にカステーロも部屋の中に入って来る。
彼は、俺が受け取った小包を見つめている。
開けろってことかな。
「差出人がない、誰からだろう……」
中身を空けると、そこにはキャプテンからの手紙が入っていた。
『久しぶりだな、フィディオ。試合は見ているよ。
君にはチームを任せきりですまないと思っている。
その代わりというわけではないが、俺からのプレゼントだ。
カステーロと共に見てくれ。きっと役に立つだろう』
「！キャプテンは、カステーロのことを知っているの？」
「……」
もう、応えない……か。
俺はそのままビデオを再生した。
かなり古い映像みたいだ……。
韓国と日本の親善試合……なんでキャプテンはそんなものを。
しかし試合を見ていることで気づいたことがある。
信じられない、こんなプレーをする選手がいたなんて……。
カステーロもただ映像を見つめている。
一緒についてきた古い雑誌もめくってみる。
影山東吾……影山零治の、父か。
そうか、ミスターKは影山東吾のサッカーを目指して……！
時間は夜9時……まだ間に合う。
俺はそのままカステーロと共にビデオを見続けて研究をした。
何度も見返して、夜中になっても朝になっても……集合時間ギリギリまで見ていた。
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