２１３話ただいまとよろしく３ ページ44
「ん……？」
ちらちらと視線を感じてそっちの方を見る。
髪を整えている男の人……たしか飛鷹。
「どうしたんだA？」
「いや、あの人……」
円堂に飛鷹の方を指さす。そうすると嬉しそうに円堂は飛鷹の元に向かって半ば無理やり連れてきた。
「紹介するよ！飛鷹だ！
イナズマジャパンのすっげーディフェンダーなんだぜ！」
「う、うっす……」
「竜城Aです！よろしくな〜」
「よ、よろしく」
ちょっと口下手……だけど、悪い奴ではなさそう。
「飛鷹は、ほとんど初心者だったけど……かなり成長したんだ！」
「へえ〜私と一緒みたいだな〜」
「一緒？あんだけサッカー上手いのに……」
「サッカーはずっとシュートとドリブルしかやってこなかったからな〜。
パス回しとか周りを見たりするとか……チームサッカーはまだまだだよ」
「……そう、なのか」
ちょっと安心したような顔をしている。
「あー！Aさん！」
すると後ろから物凄い剣幕で名前を呼ぶ春奈がいた。
「その後ろ姿どうしたんですか！そんな切りっぱなしみたいな髪！」
「うぇ！？……あぁ、ポニーテールのまま切っちゃったから……かな〜……直す余裕もなかったし……」
キャップを被っていた時は気づかなかったけど、私の長かったポニーテールはざっくり切ってしまいそのまま整えていない。
横の毛が長いような感じになってなんだかアンバランスな状態だ。
いままで気づいていなかったけど、改めて指摘されるとなんか……恥ずかしいかも。
「そうだ！飛鷹さんって、散髪できますか！？」
「え！？」
飛鷹は持っている櫛を落としそうになる。
「だって、Aさんのこと凄く見ながら自身の髪の毛を整えていましたよね。
それってAさんの髪型が気になっていたからでしょう！
軽く整えるくらいでいいんです！」
「それは……そう、だが……俺は女の髪なんて……」
やっぱ視線を感じてたのは、私の髪の毛のせいか……。
しどろもどろになっている飛鷹に、私は向き直る。
「飛鷹、私の髪整えてほしいんだけど……だめ、かな」
「出来るか、飛鷹？」
この時飛鷹には円堂と私が子犬に見えたみたいだ。
「……あぁ、ちくしょう……キャプテンに言われちゃあやるっきゃねえ。
漢飛鷹、やってやんよ！」
「ありがとう！」
こうして、急遽散髪屋になった飛鷹に髪を切ってもらうことになった。
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