２１２話ただいまとよろしく２ ページ43
「Aさん」
そう声をかけてきたのは、赤髪の人だった。
あのキラキラ、見覚えが……！
「久しぶりだね。この姿で挨拶するのは初めてかな。俺は基山ヒロト」
「！基山……」
「あれ、これからもずっとヒロトって呼んでくれるんじゃなかったっけ？」
「！」
私はザ・ジェネシスと戦った時のことを思い出した。
──「君は……家族に見放されても裏切られても、どうしてそんなに明るい笑顔になれるんだい？
この世を恨んだり、絶望したことはないの？」
「……あるよ。たくさんあった。今だってトラウマも、秘密も抱えて生きている。
だけどずっと引きずってても意味がないんだ。前を向かないといけないんだよ、ヒロト」
「円堂くんと同じことを言うんだね……俺は、グランだよ。」
「ううん、あなたはヒロト。
これからもずっと……私はあなたのことをそう呼ぶ。君の本当の名を！」──
そんなこともあったな……ちょっと前くらいの記憶なのに、懐かしさを感じる。
「ごめんヒロト。そうだったな」
「こちらこそごめんね。かなりひどいことを君に言ってしまったし……。
同じ境遇のはずなのに、本当に申し訳ないことをした。
君にどうしても謝りたかったんだ」
深々と腰を曲げてヒロトは顔を下げる。
「うぇ！？いいって！もうなんとかなったんだからいいよ！」
「……ありがとう。これからは、いちサッカープレイヤーとして、よろしく頼むよAさん」
「うん！ヒロト！」
ヒロトとがっちり握手をする。
かつて戦った敵同士がこうやって握手できるってサッカーって改めてすごいなって思う。
二度も対立したけど今はご飯を一緒に食べたりお喋りしたって不思議な感じ。でも、いい気分だ。
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