２０７話内緒だった話 ページ38
「……暇だ！」
病室でこもってちょっと。
そろそろ仮退院のはずなんだけど、本当に病室でなにもしないっていうのが無理だ。
だけどもうすでにサッカーがしたいし、修也に会いたい！
周りに人の気配はしない。バタバタしているし今なら平気かも。
ベットから降りて、そっと扉を開けようとする。
取っ手に手をかけようとしたとき、独りでに扉が開いた。
そこから現れたのは、なんとおおきなウサギだった。
「A」
「ウサギが喋った！？……って修也！？」
ひょっこりと顔を出したのは、修也だった。
「……お前もしかして、抜け出そうとしたんじゃないだろうな」
「えっちがっ！の、飲み物を買おうと思ってて……！」
さすが修也。目ざとすぎる……！
ジト目で見てくる修也になはは〜と笑いながらベットに戻った。
「飲み物なら俺が買ってくるから待ってろ」
「は〜い……」
・
「随分と見舞いに来るの遅かったね」
「お前に持っていく見舞いの品を考えていたらな……」
ウサギの大きなぬいぐるみの他にも、いろいろ袋の中にはグッズがたくさんあった。
修也らしいようでらしくない。
でも自分の中で心の整理が少し出来ていたから遅めに来てくれたのは好都合だった。
「そういえば、あの時の内緒ってなんだったの？」
「あぁ……通話の時か？」
「そうそう」
お水を買ってきてくれた修也に、私は尋ねる。
修也はぽつりと話してくれた。
「実はアジア予選決勝戦の前に……父さんに、サッカーをやめてドイツに留学しろと言われていたんだ」
「えー！今は？」
「認めてもらってサッカー一筋、ってところかな」
「よかった！」
「次はAの番だぞ」
「うぇ、うん……」
私は父さんと何があったのか、自分の決意のことを話した。
「どうしても父さんを救いたかった。そんで自分の目もなんとかしたかった。
だから相談できなかったんだ……ごめん」
「まったく……相談しないことで、どれだけ迷惑をかけたのか」
「分かってる！まさか、塔子のところや鬼道のところも動いているとは思わなくって……」
「それくらい心配させていたんだ。仲間に、大事にされている自覚を持て」
「うん……そうだね」
なんか修也に怒られたのに、嬉しいな。
にへら、と笑う私を見て修也は仕方がないなというようにため息をついた。
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