２０４話両親２ ページ35
きっかけは養子縁組の時だった。
子供に恵まれなかった竜城家は、養子を取ることにした。
その時、偶然当たったのがAさんだという。
引き取られる際に影山とそこで一度話したきり。
だけども妙な契約をしたという。
「『こちらは竜城のあなた方には一切干渉しない。
その代わり、Aの行動には何一つ言わないこと』……それが、条件でした」
そう俯くお母様は、悔し涙を流した。
影山の命令には一切逆らわない……心配でも止める事ができない。相当辛かったと思う。
「色々なところに出掛けたり、遊んだり家族のようなことはたくさんしてきました。
でも……Aを、守ることはできなかった……！」
空港で去っていくAさんの腕を取ればよかったと、何度も後悔したと話す。
Aさんのお父様は俯いたまま話さなかったけど、同じ思いだったと思う。
そこで私は、今影山の近くにAさんがいると判断できたの。
・
「……そう、だったんだね。
私、あまり我儘言った記憶はないけど……随分と自由に育てられているなぁとは思ったよ」
「影山の契約には気づいていなかったのね」
「うん……鈍感だなぁ……私」
「そのあとは、ご両親に雷門イレブンでのお話をたくさんしたわ」
「えっ！た、例えば……？」
ひくついた顔で反応するAさんに、私は喝を入れる。
「あなた、旅でのことほとんど伝えていないそうじゃない。
いろんなこと話させてもらいました！」
「ええ！具体的になに！？なにを話したんよ〜！」
「ご両親に聞いてちょうだい！」
私は今、Aさんのご両親の顔を思い出す。
イナズマキャラバンでの話をした時、本当に嬉しそうにしていた。
──「Aには、寂しい思いをさせていたんじゃないかと思っていましたが……
素敵な仲間に恵まれて、あの子も幸せね。
次に送り出す時は彼女とちゃんとよく話し合います。ありがとうございました」──
いい親だからこそ彼女の明るさや優しさがいつも出ているのだと、改めて分かった。
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