１９７話始めたきっかけ５ ページ28
次の日、小野さんは仕事を全て終わらせて私を迎えに来てくれた。
「君を見つからないように外に連れて行くのは、難しい……かな」
「……大丈夫。私についてきて」
私は帝国学園の構造を全て理解していた。
監視カメラの位置、人が常に通る時間をなにもかも。
予想外のことがあっても、キラキラが見えれば平気だった。
「君……凄いな」
「……別に、普通だよ」
誰にも見つかることなく小野さんと帝国学園の駐車場に向かった。
車も乗るのが久しぶりだったから、私は外の景色をずっと眺めていた。
キラキラが沢山あるかと不安だったけど、夜だったからかまだ大丈夫だった。
「お外って、こんなにキラキラしているんだね……」
「ふふ、もっとキラキラしている場所はいっぱいあるよ」
しばらくして小野さんの家に私はついた。
普通の家ってこんな感じなのかな。そう思いながら小野さんに連れられて家に入る。
「ただいま〜連れてきたよ」
「おかえりなさい！冬花！Aちゃん来たよ〜」
「はぁ〜い！」
元気な返事をして出迎えてくれたのは、耳より上の高さでツインテをした女の子だった。
初めて同い年くらいの女の子と喋るから、私は小野さんの後ろに隠れてしまう。
彼女のキラキラが、眩しかったのも相まって。
「私、冬花！よろしくね、Aちゃん」
「A……ふ、冬花……よろしく」
緊張しつつも私が握手したのを見て、小野さん夫婦はにこやかに見守っていた。
「いこ！私のお気に入りのおもちゃがあってね……！」
「うぇ！えっと……！」
小野さんは冬花やお母さんに私のことをいろいろと伝えていたみたいだ。
楽しくお喋りをしたり、食卓を囲んでご飯を食べる事なんて今までになかった。
本当のお母さんとも、孤児院でも、帝国学園でも。
「おいしい！」
「ふふ、いっぱい食べてね」
「ママ！おかわり！」
「冬花もよく食べるなぁ」
家族って、こういうものなんだ。
キラキラして暖かくて、幸せだということを私は初めて知った。
だけど。
「っ！」
「どうしたの？」
「目にゴミでも入ったかしら？」
私の目が、幸せを邪魔する。
「大丈夫……気にしないで！」
ヂカヂカと瞬く光。
冬花の顔が見えなくなるくらいの光が私を襲い掛かる。
ごまかせたか分からないけど、私は目を細めた笑顔でなんとかしのいだ。
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