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１９６話始めたきっかけ４ ページ27
小野さんは私にサッカーの知識を教えてくれた。父さんには内緒で。
「いいかい、つま先を使うのはシュートとドリブルだけ。パスをするときは足の横を使うんだよ」
「ここ？」
「そうそう！」
わずかな時間だけが、私の楽しい時間だった。
小野さんは仕事が忙しい中来てくれているのか、目に隈があるときも何度かあった。
「どんどん上手くなってくるね。私の娘もサッカーが好きなんだ」
「小野さんにも、娘がいるの？」
「あぁ。冬花って言ってね……そうだ！今度一度家に来てみないか？」
「え……」
私は帝国学園出たことが一度もなかった。
帝国学園は十分に私にとって広いし、キラキラも少なく落ち着く場所だった。
だから、外に出るという発想がなかった。
「今度影山総帥は県外の学校と試合しに行くから、夜は遅いだろう……。
その時にだけど、どうかな」
小野さんからたくさんのサッカー以外の話も聞いていた私は好奇心を抑えられなかった。
「うん……行く」
私は初めて帝国学園の外に出ることになった。
出掛ける前日、父さんは私の部屋に来る。
サッカーボールは本棚の奥に常にしまっていたからバレる事はなかった。
「A。明日は私は帝国学園にいない。大人しく部屋にいるんだよ」
「うん、父さん」
「……私に、隠していることはないか」
「！別に、隠していないよ！」
秘密を隠すのが苦手なのは、昔からだった。
「そうか……別にいいんだ」
「……」
父さんを裏切っているような気がして、ちょっと心が痛かった。
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