１９４話始めたきっかけ２ ページ25
小学校に上がるちょっと前くらい。
私は帝国学園の一室で厳重に管理されながらも影山総帥……父さんの元にいた。
絶対に誰にも見つからない特殊な部屋で大人しくすること。話しかけられても逃げること。
これを徹底的にされた。
父さんとしては私を誰にも取られたくなかったけど、手元に置いておきたかったんだと思う。
私は人のキラキラが見えるから誰がどこに通るのか判断が出来た。
だから帝国学園にいても、誰にも私の存在は気づかれなかった。
私は急いで走って父さんの部屋に向かう。
「父さん！」
「A。人に見つからず来れるようになったな」
「うん！この髪すっごい目立つから、見つからないようにするのすごく難しいんだからね！
……切っちゃおうかなぁ」
「私はお前のその髪は綺麗だと思うがね」
父さんは心にも思っていないことを言う。
気づかない私はそんなことを言われて嬉しいと思わないわけがなかった。
「えへへ……じゃあ伸ばそ！」
「そうだ、ここへ来る間にキラキラした者は見えたかい」
「うーんとね……あ、あの人！」
私は帝国学園に映し出された監視カメラのうちの一つを指さす。
そこにいたのは、茶髪の男性だった。
「小野か……そうか、ありがとう。父さんはこれから仕事だ。早く部屋に戻りなさい」
「はーい」
「忘れるな。光の強い者はお前を惑わす。私以外の人と会わないようにな」
「分かってる！」
私は少し名残惜しかったが、父さんの元を離れる。
父さん以外の人は怖い人。そう教えられてきた。
「父さん……今日も遊んでくれなかったな」
扉を閉めて張り付いたような笑顔を無くす。
父さんに笑顔になってほしいから、と明るく振舞っているが本当の私は一人になると何もできないただの子供だった。
これが本来の私。何もないからっぽの。
自分の部屋に戻る前に、帝国学園のグラウンドに寄る。
そこでは小学生くらいの男の子たちが皆サッカーをしていた。
小学校高学年の人たちに交じって私と同じくらいの小さな男の子が、大人顔負けの動きでドリブルをしていく。
「……いいなぁ」
私も、こんな目がなければサッカー出来たのに。
そう思っていると、観客席の出入り口にサッカーボールが一つ落ちていた。
恐らくグラウンドから飛んできたボールが仕舞われずそのままになっていたのだろう。
私はボールを手に取り、自室に戻った。
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