１８９話父さん５ ページ20
次の日になり俺と円堂、ヒデナカタとルカはルシェの元に訪れていた。
Aは抵抗を最後まで続けたが、力を全て使い果たしたのか急に気を失ってしまい病院に運ばれた。
まだ、目覚めていないという。
ちらちらと気にかけていた円堂が声をかける。
「鬼道……大丈夫か？」
「大した怪我じゃない」
俺はAに抵抗された時に引っかかれた傷で頬や腕に絆創膏を貼っていた。
数日で消えるくらいだ。問題はない。
それよりも、Aの傷の方が俺よりも大きく深いだろう。
影山総帥はニュースで亡くなったと告げられ、何度もその映像が流れる。
そんなことも知る由もないルシェは、影山総帥からのプレゼントを手に取った。
「やった！プレゼント！！わあ、何だろう……！
これ、おじさんからなんだよね！」
ルシェからのプレゼントには、綺麗なオルゴールと手紙が添えてあった。
「……手術が成功した時のお祝いにと用意していたようだ」
「……」
「おじさんにお礼の手紙書こうっと！今度会えるのいつかな〜早く会いたいな！
サッカーのこともいっぱい教えてもらうんだ〜！
あとねあとね、おじさんには女の子がいるんだって！でも試合には男の子もいたよね。
一緒にサッカーする姿、見てもらうんだ〜！」
「っ……」
ルシェの言葉一つ一つに、胸が締め付けられる。
「あ！おじさんからの手紙だ！」
「！」
『ルシェ、その目でしっかりと見て、そして感じてほしい。
サッカーの素晴らしさ、私が人生のすべてをかけて憎んだ、そして愛したサッカーというものを』
ルカとルシェが楽しそうにサッカーを俺たちは見つめる。
本当に、複雑な気分だ。
「Aに……会いに行かなくちゃな」
「……そうだな」
「彼女の闇は、かなり深いだろう。大丈夫か？」
ヒデが心配そうに聞いてくる。
「Aなら、大丈夫だ！俺たちの仲間だからな」
円堂が根拠もない自信だがそう言う。
Aなら大丈夫だろう……俺もそう思っている。
「Aが目覚めたら、みんなで会いに行こうぜ」
「あぁ……だが、彼女は集中治療室にいるはずだ。
大人数でいくよりも、少ない人数で行った方いいだろう」
「確かにな……誰から向かわせようかな……」
「それなら、あいつらがいいだろう」
Aのことが大好きで、親友の彼らなら彼女の闇を明るく照らしてくれるはずだ。
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