１８８話父さん４ ページ19
鬼道side
「大変です！影山零治が……搬送先の警察署でトラックが突っ込んで来て……！」
「！？」
影山総帥が事故に！？
すると、隣にいたはずのAがすでに駆け出していた。
風が物凄い勢いで吹く。
気づいたら彼女はもう遠くの方にいた。
「父さん……父さん！！」
「！？待て、嬢ちゃん！！」
鬼瓦刑事とフィディオと共に向かうが、速すぎて追いつけない。
こんなにAは速かっただろうか……いや、筋肉の動きを見るに、今は120％の力が出ている。
影山総帥が話していた、プログラムの話か……！
「くっ……追いつけない！」
「追うしかない！」
「あぁ！」
一瞬彼女を見失ったが、スタジアムの入り口に向かうとAは倒れていた。
手足を必死に動かそうとしても、もう動かせないようだ。
「動けっ……動けよおっ……！」
「カステーロ！落ち着け！！」
「離せっ！！」
フィディオが体を抑えようとしても、Aはその手を払う。
「A！！」
「離せ鬼道ぉ！！私は……行かなくちゃいけないんだ！！」
「Aっ……！」
もがく彼女を、俺とフィディオで必死に抑える。
こんなAを俺は見たことがない……。
「どいてよ！！父さんの元に行くんだ！！」
「ダメだっ……！カステーロ！！君のその体じゃ限界だ！！」
「くそっ！！動けよ……動けって私の体……っ！！」
「A……！A……！！」
「ああああああ！！！」
Aは今までに聞いたことのない声で叫ぶ。
もうすでに抗える力も残っていないはずなのに……抱きしめていないと、すぐに振りほどかれそうだ。
これが、Aの本心。
にこにこと笑っているAでも、無表情のカステーロとしても違う。
彼女の……本当の姿。
何故か、その姿を見ていると涙が出てきた。
それはフィディオも一緒だった。
行きたいのに、行けない。それは俺たちも同じ気持ちだからだ。
「カステーロっ……頼む……！」
「A……！お願いだっ……」
「父さん……父さあああん！！」
俺たちは、まだ子供で……無力だ。
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