１８６話父さん２ ページ17
いっぱい話している私の後ろに、鬼道とフィディオが並ぶ。
鬼道に肩に手を置かれて、私は少し落ち着いて向き直る。
「父さん、私を助けてくれてありがとう……。
それで、今のサッカーが出来ているのは鬼道やフィディオたちのおかげなんだ」
「……私もなりたかったよ。お前たちのように」
「あなたなら、なれたはずです」
そう鬼道が答えると、スタジアムの外でサイレンの音が響き渡る。
「まさか、自分で……！」
「私にとってこれは最後の試合だ。楽しかったよ」
鬼道は、自分のゴーグルを外した。
何気に鬼道の素顔、初めて見たかも。
「久しぶりだな、お前の素顔を見るのは」
鬼道はこのゴーグルは父さんにもらったものだと話した。
そうか、鬼道も私の眼鏡と同じようにもらったものだったんだ。
「お前にはもう必要ないか」
「いえ、これからも使わせてもらいます。
これは俺のトレードマークですから」
鬼道はゴーグルをつけなおした。
するとコートの入り口から、警察の人が入って来る。
「影山零治！傷害罪及び国外逃亡の容疑で逮捕する」
抵抗せず、ただ警察の人についていく。
「私がこの言葉を口にすることなどないと思っていたが……。
ありがとう、フィディオ、鬼道。そしてA……」
「監督……」
「影山、総帥……」
「父さん……！」
それぞれ彼に対しての呼び方は違うけど、想いは同じなはずだ。
警察にそのままついていく父さんの背中は大きいようで小さかった。
鬼道は感謝をするように、深く礼をする。
私は……ただ見ているだけだった。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 114人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
