２９『一郎彦』 ページ31
一郎彦と二郎丸が帰った後、俺は独り荷物を拾っていた。
「あ…。」
せっかく拾ったものの、すぐに落ちてしまう。くそ、いい感じにうまく乗ってたのに。
「…くそっ。」
一郎彦に、「こんなひ弱なやつ」と呼ばれたのが悔しかった。
しゃがんで拾おうとすると、細い手がさし伸ばされる。
「ひとつ、持とうか？」
それは一郎彦だった。
「…いいよ、別に。」
「女の子が重い荷物持ってはいけないぞ。」
「…お前、俺が女だって分かったのかよ…。」
俺は目を見開き驚いた。
「あぁ。最初は男かと思っていたけど、違うとすぐにわかった。」
「…お前も、女っぽいけどな。」
「ちょっと言われるかな。」
「ハハハ。」と軽く苦笑する一郎彦。俺にこんなに接してくれたのは、百秋坊くらいだった。
「僕は一郎彦。君は？」
「俺は、利己。」って名乗ろうとしたけど、ここのバケモノの世界では俺は陸奥なんだ。
「俺は、陸奥。一郎彦…か。」
「よろしく。陸奥。」
「……おう。」
ニコリとやさしく笑う一郎彦をみて、俺は目を合わせずそっぽを向いて握手した。
「けっこう重たいね。どこまで運べばいい？」
「広場の前まででいい。いろんな人に見られるのも、あれだし。」
「ちょっと離れて歩けば問題ないよ。この時間帯なら、見廻り組とは会わなさそうだし。広場の外れまででもいいかな。」
見廻り組というのは、猪王山の所で勤めている弟子が、パトロールする部隊のことを言うらしい。
「…別に大丈夫なのに。」
「いいじゃないか。僕がしたいんだ。」
「もう好きにしろ。」
「ふふ、素直じゃないね。」
「るせっ！」
初めてちゃんとした会話ができて、うれしかったのか一郎彦に「こんなひ弱なやつ」と言われ悔しいのか良く分からない感情になった。
だけど、ここでも俺が力ないせいで一郎彦が荷物持っているという状況に変わりないんだ。
…やっぱ悔しい。
この時の一郎彦は、誰にでも優しかった。だけど、成長するにつれ、俺達は歪んでいってしまったんだ。
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トラック3号（留学する）(プロフ) - 沙耶さん» コメントありがとうございます！体のことも心配してくれてとてもうれしいです！更新頑張ります〜！ (2016年12月19日 15時) (
レス) id: 886ceede30 (このIDを非表示/違反報告)
沙耶 - あっ！言い忘れてしまいましたが、お体には気を付けてくださいね！ (2016年12月15日 4時) (レス) id: 859f6178c6 (このIDを非表示/違反報告)
沙耶 - 私、バケモノの子もヒロアカも大好きで私、めっちゃ嬉しいです！更新頑張ってくださいね！ (2016年12月15日 4時) (レス) id: 859f6178c6 (このIDを非表示/違反報告)
トラック3号(プロフ) - じたくけいびいんさん» コメントありがとうございます！続編を作ることになったので、そちらも宜しくお願いします！ (2016年9月26日 20時) (レス) id: 886ceede30 (このIDを非表示/違反報告)
トラック3号(プロフ) - 星さん» コメントありがとうございます！だんだんとヒロアカのメンバーとも絡んでいくつもりですが、容量の問題で続編になってしまうかもです。一郎彦との関係にもご注目ください！更新頑張ります！ (2016年9月26日 17時) (レス) id: 886ceede30 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：トラック3号 | 作者ホームページ：勝己も強くなるんだったら、俺はそれ以上になる。
作成日時：2016年7月15日 23時
