９６『初めての人間界』 ページ3
一郎彦side
「すっげー！人がいっぱいだよ兄ちゃん！」
「落ち着け二郎丸。周りを見ないとはぐれるぞ」
陸奥からもらったチケットを握りしめて僕は二郎丸と共に人間界へ来た。
本来なら姿を隠していかなければならないのだが、お祭りだということで辺りに紛れ込めると思いあえてフードを被らなかった。
逆に被ったら怪しまれるだろうしな。
それに、こんなにうれしそうな二郎丸は久しぶりだ。
狭い渋天街では見られないものばかりだ。
……勿論、僕も来るのは久しぶりだとは言えどあの時の記憶はない。
文字が読めるからここまでたどり着けたものの、今後は分からないから慎重にいこう。
それに、こんなにたくさんの人がいる中で陸奥は見つけられるのだろうか。
「兄ちゃん！アレ上手そう！」
「そうだな、買っていくか……あらかじめ陸奥からお金を渡されている。それで買おう」
「陸奥もすげーよな。宗師様の戦いみたいな感じなんだろ？」
焼きそばを買いながらそういう二郎丸。
宗師を決める戦い……あまりいい思い出はない。
「めっちゃ上手そう〜！そろそろ席に向かおうぜ！」
「あぁ」
この笑顔に、何度救われたことか。
席を確認し二郎丸と並んで座る。
やっと一息付けた感じだ。
二郎丸は先ほど買った焼きそばを食っている。
「あっ！あれ陸奥じゃねえか！？」
僕よりも鼻が利き、目のいい二郎丸はすぐに見つけた。
「本当だ……緊張しているのかな」
「陸奥ー！頑張れ！」
熊徹がいるであろう刀を左手で抑え、きょろきょろ辺りを見渡している陸奥と、目が合った。
こんなに遠いのに、よく見つけられたもんだ。
微笑みはしないが、腕をスッとあげて握りこぶしを作っている。
僕も拳を上げてぐっと握りしめた。
「無様な姿は許さないぞ。……渋天街のヒーロー」
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カケオレ - とても面白いです。一気読みしてしまいました！更新待ってます！頑張ってください！ (2022年4月28日 19時) (
レス) @page5 id: 661d0ebc5d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：トラック3号 | 作者ホームページ：勝己も強くなるんだったら、俺はそれ以上になる。
作成日時：2021年7月31日 23時
