六十一話 ページ35
蓮の花が好きだった。泥水の中で花開く様は堂々としていて、見かける度に「あぁ、いいなぁ」と、花そのものに尊重と愛着と、ほんの僅かな嫉妬心を入り混ぜて、それらを全て憧れに包んだ。
正直、極楽浄土だとか、神聖な花だとか、そういう話に興味はなく、単純にそれこそが傷を癒す�猝��瓩任△蝓↓狷猫瓩任發△辰燭世韻澄�
オセルが注ぐ銃弾の様な雨粒が、着実に私の傷口から溢れる赤を削いでいく。
戦いが終わるまで、血の量が足りるだろうか。先の一撃も急所こそ逸らしたがそれでも相当深い傷を負った。
蓮で傷口を塞いでいても、治っているわけではないのだから、僅かに歪んだ隙間から痛みが滲む。
神力を当てられて、神の一撃を受けて、力の差と間近に感じる死の恐怖に、ガクガクと生まれたばかりの赤狐のように両の足を震わせる。それでも喰らい付いて、立つことができているのは、今目の前で共に璃月を守らんとしている仲間のおかげだろう。
…嘘。
きっと、一番支えになっているのは繋いだ手の温もり。
「……………ッ……！」
私の隣で恐ろしい夜叉の儺面を被り、その口元の隙間から覗く尖った牙を食い縛る魈の姿が、何よりも心を揺らがせる。
苦しんでいる。
どうしたら少しでも和らげることができるだろう。
これ以上、傷付いてほしくない。
笑い方も霞んでしまうような辛い過去から守りたい。
一人にしたくない。
本当はずっと、ずっとそばに居たかった。
どうか。どうか。
懇願にも等しい思いが胸の内側を巡って止まない。
繋いだ手に力が籠るたび、泣きそうなほど痛む傷口なんかもうどうでもよくて。
必死に隣にいるのだと記すように握り返すばかり。
痛いほどの雨の中で、潰えてしまいそうなほどの不安と恐怖の中で、僅かに見えた�牾凌�の未来�瓠�
…それに気付いた時、思わず凝光を見上げてしまった。
……あぁ、そうだとも。
きっと彼女だって、璃月を愛している。
それは、幼児のような言い訳で璃月に縋っていた私よりも、ずっと。
血の不足で霞む視界の中、輝かしい一撃が帰終機から放たれたのだけは、この瞳で捉えた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 686人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「原神」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ノア(プロフ) - まっでまじだ！！ (2022年11月13日 9時) (
レス) @page33 id: 7cc6cd9634 (このIDを非表示/違反報告)
ぐへへへへ - あばばば好きすぎます！！お体お気をつけてください！続き楽しみにしてます！！ (2022年9月14日 1時) (レス) @page32 id: 55d4558f37 (このIDを非表示/違反報告)
gtuysut5843…(プロフ) - 更新楽しみにしてます！お忙しいでしょうが頑張ってください！ (2022年9月2日 0時) (レス) @page32 id: 5bb1efd8a4 (このIDを非表示/違反報告)
rurinigana(プロフ) - すっごい好みなものを見つけてしまった…！夢主ちゃんかっこよすぎる！！これからも更新頑張ってください！応援してます！ (2022年6月22日 11時) (レス) @page32 id: 29637ba3af (このIDを非表示/違反報告)
ふわな - 本当に面白いです！これからも頑張ってください！応援してます！ (2022年6月15日 8時) (レス) @page30 id: 71a4ce2144 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：とりまろ。 x他1人 | 作成日時：2021年6月10日 13時
