四十八話 ページ18
多少の気分転換と休息も兼ねて、今日は外でのんびりしようと思い立ち、デットエージェントを連れ、漉華の池付近の水辺を歩いていた。
水の澄んだ匂いと、岩肌の隙間を縫って吹いていく風の心地が何とも快く、休息にはぴったりに思える。
「君も少しは気楽にすればいいのに。隣でそんなガチガチに警戒されちゃあ休めるものも休めないよ。」
当然、監視についているデットエージェントは私の動向をずっと伺っていて、その視線が一番気が散ってしまう。
その目に映る感情なんて大方、なぜこんなものの監視をしなければならないのか。これほど警戒するべきものなのか、だろう。確かにこんなに気を張って見守るものでもないだろうさ。
手頃な木の根に腰掛けて、澄み渡って広がる景色をただ眺めていた。お茶なんか用意していたらもっとよかったかもしれないなぁなんて、思いながら。
内心、この監視の目を欺き、どうやって足のつかない方法で公子の目的を阻止するかを考慮していた。
一番は、公子を仙祖の亡骸に合わせないことが一番だが、それを阻止できるほどの力はきっと私にはない。
ファデュイの執行官と真っ向勝負してどうなるかなんて火を見るよりも明らかだ。
「ただ安寧に暮らしていたいだけなのに、なぜ自ら火に飛び込むのだろうね。」
そんな言葉を私のわずか後ろで私を監視しているデットエージェントに投げかけてみるも、その問いに関する答えなんてものは帰ってこない。
戦ごとは、人の心をも殺し、平穏を失った人々は自らを覆う全てを害と見る。
そして、ただ平和に暮らしていたいと思う気持ちだけが先行して、ならばいっそ、害が自らを襲う前に。
……………そう言って、誰かを、何かを、攻撃する。
氷の女皇が求め、そして志すものは私の理解に及ばないほど広大なものなのだとしても。
500年前に滅んだ、カーンルイアの話が未だに尾を引いていたとしても。
安寧の中、夢のない一生を送るとしても。
「奪い合い、失い、孤独になることより、よっぽどいいと思うがね。」
私の恐れるものは、神の恐怖とはなり得ないのだろう。
…………羨ましい限りだよ。
686人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「原神」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ノア(プロフ) - まっでまじだ!! (2022年11月13日 9時) (レス) @page33 id: 7cc6cd9634 (このIDを非表示/違反報告)
ぐへへへへ - あばばば好きすぎます!!お体お気をつけてください!続き楽しみにしてます!! (2022年9月14日 1時) (レス) @page32 id: 55d4558f37 (このIDを非表示/違反報告)
gtuysut5843…(プロフ) - 更新楽しみにしてます!お忙しいでしょうが頑張ってください! (2022年9月2日 0時) (レス) @page32 id: 5bb1efd8a4 (このIDを非表示/違反報告)
rurinigana(プロフ) - すっごい好みなものを見つけてしまった…!夢主ちゃんかっこよすぎる!!これからも更新頑張ってください!応援してます! (2022年6月22日 11時) (レス) @page32 id: 29637ba3af (このIDを非表示/違反報告)
ふわな - 本当に面白いです!これからも頑張ってください!応援してます! (2022年6月15日 8時) (レス) @page30 id: 71a4ce2144 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:とりまろ。 x他1人 | 作成日時:2021年6月10日 13時