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七話 ページ8

「先刻も言ったが、魈は未だにお前の安否を気にしている。殆どの仙人がお前は死んだのだと思っていても、魈だけはお前が生きていると信じて今もお前を探している」

その言葉に、胸がキュッと締め付けられた。
私はまともに戦闘ができない。それこそ、腕力すらほぼ無く、剣を振ることも弓を引くこともできず、持てる武器なんて精々短剣くらいだ。それさえも振り回せるほどの力がなかったが。
唯一ある力なんて、痛みや恐怖から逃げるための足の素早さか、強いものに見つからないように気配を消すコツくらいだろう。

本当にただの臆病者だ。人を護る責任というものがなければ、私はあの戦争で尻尾を巻いて逃げていたと思う。

あんな魔神戦争の中で、よく生き残れたと自分でも不思議に思うくらいには雑魚だった。そんな私が突然消えたとなれば皆口を揃えて死んだと言ってもおかしくはない。

それでも、魈は生きていると信じてくれている。…いや、彼の今までを加味して言うのであれば死んでいて欲しくないという気持ちに近いのだろう。
今まで多くを失った彼にとっては、例えどんなに苦手な存在だとしても、顔見知りには死んで欲しくないと思うのは不思議ではない。それそこ、死を決定付ける死体すらないのだから、きっとどこかで生きているという希望を抱くだろう。


「…A。頼む。魈に会ってくれないか。無事であるなら、そうであることを伝えて欲しい。
あの葬儀の日、参列に並んでいたお前の姿を見た時、俺がどれだけ愁眉を開いたかを、どうかわかってほしい」

鍾離殿は変わらず、ただ真っ直ぐに私を見た。自分自身を嫌うことも他人を嫌うことも恐れて逃げ出した私に、彼は根負けせず何度も会いに来てくれた。臆病で卑怯者な私に何度も声をかけ、沢山心配してくれた。

魔神戦争の時、人や神の本意に恐怖を抱き、他者との関わりを恐れた私に優しく手を差し伸べてくれたあの時と同じように。


「……わかりました。
ですが契約してください、鍾離殿」

貴方が今、何思って凡人の振りをするのか。そんなことは出会った最初から見抜いていた。
その澄んだ瞳を真っ直ぐに見つめ返せば、鍾離殿は困り顔を浮かべる。



「最後…その時が来るのなら、せめて私に見送らせてください」

───世界で一番恵まれた神に、最後の感謝を伝えたいのです。

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りー - 理由把握いたしました。先日は失礼なこと言ってしまって申し訳ありません。五月病など無理なさらないでくださいね。 (2021年6月3日 17時) (レス) id: d04a74515a (このIDを非表示/違反報告)
りる - とりまろ。様はもう小説は書かれないんですか…? (2021年5月31日 7時) (レス) id: d04a74515a (このIDを非表示/違反報告)
- すみません絵じゃなくて小説です…誤爆しました… (2021年5月26日 18時) (レス) id: d04a74515a (このIDを非表示/違反報告)
- イッキ見しました…ひゃえ…大好きです主様の絵好きです更新まってます!! (2021年5月22日 0時) (レス) id: d04a74515a (このIDを非表示/違反報告)
- 小説とても面白くて大好きです!更新頑張って下さい! (2021年4月25日 14時) (レス) id: 43b4052d04 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:とりまろ。 x他1人 | 作成日時:2021年3月31日 20時

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