一話 ページ2
────岩王帝君。
それは璃月の岩の神であり、テイワットの七人いる神の内、最も古いとされている武神である。
彼は往生堂の客卿として『仙人の葬儀』を行っているらしく、現在鍾離という名前で人の振りをしているそうだ。
私は岩王帝君である彼の元に仕えていた存在の一人だった。
正直、私は彼に合わせる顔など持っていない。その為、突如として姿を消したその日から今現在に至るまで、彼にも他の仙人にも誰一人にだって会ってこなかった。
何故なら私は人でないものの立場や苦しみに耐えきれず、人々の為に戦ってきた誰よりもいち早く逃げ出し、凡人落ちした臆病者だったからだ。
────臆孤透眼真君。
その名前を璃月人は誰も知らない。知っているとしたら、相当私に執着があるものなのだろう。それか、仙人にその名を聞いたか。そのどちらか。
それ以外で、私のことを知る者はいない。それだけ私は璃月に何もしてこなかったという事だ。それが余計に嫌になって、誰の目にも映りたくなかった。
その嫌悪はついに自身の同僚や上司にでさえ及び、私は帝君にも他の仙人にも、そして守ってきたかつての璃月の人々にも何も言わずに姿を消した。いっその事、岩王帝君ではない別の神の元で生きようかとも思ったが、ひとつ気掛かりなことがあり、璃月に残ることにした。
ここにいるからには、誰にも見つからずに彼らを見守り、彼らが生きていた証を文章として記録しなければならないと思った。だからこうして今尚原稿に記録し続け、正しい歴史を璃月の人々に伝え続けている。
時折、趣味である小説の作成も交えながら、裕福とはいえないような素朴な生活をして隠れてきた。
だが、人間の友人が寿命を迎え、その際の葬式に行った時に運悪く岩王帝君…もとい、鍾離殿に目をつけられ捕まった。
それからとにかく質問攻めだった。その殆どが心配からの質問だったのが余計に胸に針を刺した。
そんな心配を募らせ続けさせたのにも関わらず、帝君は私の心情を汲み、他の仙人に私の安否を伝えることは伏せてくれた。
本当に、帝君には何から何まで申し訳がつかない。私は、一度彼を裏切ったようなものなのに。
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りー - 理由把握いたしました。先日は失礼なこと言ってしまって申し訳ありません。五月病など無理なさらないでくださいね。 (2021年6月3日 17時) (レス) id: d04a74515a (このIDを非表示/違反報告)
りる - とりまろ。様はもう小説は書かれないんですか…? (2021年5月31日 7時) (レス) id: d04a74515a (このIDを非表示/違反報告)
り - すみません絵じゃなくて小説です…誤爆しました… (2021年5月26日 18時) (レス) id: d04a74515a (このIDを非表示/違反報告)
り - イッキ見しました…ひゃえ…大好きです主様の絵好きです更新まってます!! (2021年5月22日 0時) (レス) id: d04a74515a (このIDを非表示/違反報告)
星 - 小説とても面白くて大好きです!更新頑張って下さい! (2021年4月25日 14時) (レス) id: 43b4052d04 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:とりまろ。 x他1人 | 作成日時:2021年3月31日 20時