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連休初日の誰もいないオフィスに足を踏み入れると同時に、エアコンを全開で作動させる。
僕一人がこの広い部屋を占拠して快適に使うことに、若干の罪悪感はあるけど。
体力と忍耐力にそこそこ自信あるからって、もはやそういう問題じゃない。
やせ我慢は命に関わる。
僕のせいで地球温暖化がほんの少し進んだら……ごめんなさい。
平日のうちに何となくやり残した色々を、朝から一気に片付けていく。
人がいないと多少の寂しさはあるけど、自分のやりたいことを好きなだけ自分のペースで進めていけるというメリットもある。
暇な時間の有効活用とばかり、思い付きで朝決めて出社しちゃったけど、来て良かった。
一日かかると思った作業は、午後の早い時間にはあらかた目途がつきそう。
うん、昼メシ飛ばして、一気にやっちゃおう。
終わったら、ゆっくりごはん食べに行こう。
脳内のギアがまた一段上がって、タイピング速度もすこぶる軽快。気持ちいい。
外のドアが開く音がしても、気にもとめないくらいだった。
「見つけたぞおいー」
聴こえる筈のない自分以外の声が響いて、驚きのあまり口の中を少し噛んだ。いった。
ドアの方を見る前に、もう誰だかわかるんだけど。
しかも、なんでちょっと機嫌良くないの？
わかり切った答え合わせのために、渋々顔を上げて、ついでにとぼけとこ。
「お疲れ様です。須貝さんも仕事すか？」
帰ってくるのは無言。あと何ていうか、恐喝とかに使おうと思えば使えそうな、人から見たら結構怖い顔。
僕は怖くもなんともないけどね。
それより、何すかその恰好。せめて着替えてくればいいのに。
「その恰好でここまで来たんですか？」
「おう、地下鉄乗り継いでな」
静かなオフィスに突如出現した須貝さんは、朝出て行った時に見た草野球のユニフォーム姿のままだった。
いやままっていうか、朝は洗濯したてで綺麗だったけど、今は表面積の半分くらい砂と土がついてる。
床が汚れるよ、掃除担当が可愛そう。
「着替え持ってないんすか」
「終わったらすぐ帰るつもりだったからな。ところがだ、帰る前にいくら連絡しても、ちっとも山本さんからの返信がないもんでー」
あら。あらあらあら。
なるべく平静を装いつつ、スマホを確認……バッグの底に置きっぱなしだった。全然気づかなかった。
これは、もしかしなくても、僕が悪い……のか？
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作者名：しまむら | 作成日時：2021年7月10日 10時
