大人になった子ライオンと社会人になったナイスガイの話 (ページ3)

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コンビニ～昼食ページ3

「正論じゃないすか？実際みんな気にしなかったりなあなあにしてるし、アレは須貝さんしか言えなかったと思う」
　QuizKnockは全員が有能、ていうかガチの天才だけど(こういう時に自分は数に入れないのが奥ゆかしさっていうものよ)、社会人として、会社員としてはまた別の話。
　誰よりも長い間学生だったのに、世間の空気や常識を誰よりも良く知っている須貝さんは、社内に蔓延りつつある些細な(とやってる人間は思ってる)ルーズさが耐え難いらしい。
　そのイライラが高じると、彼を纏うオーラに圧として出てしまい、さっきも廊下ですれ違っただけの乾を怯えさせていた。あ、実害出てたわ。
　可哀そうな乾……気が向いたらアイス買ってってあげよ。
「やらかしっていうか、さっき須貝さんとすれ違った乾が震えてたけどね」
「はぁ何で？奴に何の関係もなくない？」
　いや声でかい。そこだよ。

　世間の昼休みに出遅れ、既にすっかすかになった棚の前に二人して立つ。
　イラっとするほどなんもない。ああ空腹で須貝さんの攻撃力がまた上がっちゃう。
「何であいつら、あれで平気なん？」
　増える筈もないのに何度も棚を見渡しながら、問いかけかはたまた心の声か。
「何ででしょうねえ……多分だけど、みんないっぱいいっぱいなんですよ」
　だからってルーズで良いわけじゃないんだけど。
「須貝さんは、わかってるならやれって思うだろうし、実際できるし。でも、みんながそうじゃないし」
　多分そこんとこ自分はうまくできる方だから、
「僕はまあ苦手じゃないんで、しばらくはみんなの分も頑張ります。それで何とか」
　思うことがあると真顔で強い声になるけど、決して怒ってるわけじゃない。
　須貝さんの時に制御できない真っ直ぐさは、使い所を選ぶ武器だと思う。周りにも力が必要かも、ってね。
「俺、もっと猫被って優しいナイスガイにならんとあかんかなあ」
「んー、動画以外で声のボリューム落とすだけで3割くらい解決しそうっすけどね」
「……俺そんな声でかい？」
「あと、相手の話をちゃんと聞くことかなあ。どんなに自分が正しくても」
　言い過ぎたかな？オーバーキル？
　隣を見やると、あら、猫背の角度が。
　人に強く言ってる自覚はあって、だから何を言われても受けて立つ。
　ちゃんと議論したい人なんだよね。
「僕の話はこうやってちゃんと聞いてくれるじゃないですか。みんなにもそうすればいいかなって」
「それは無理」
いや白旗揚げんの早っ。