会議〜コンビニ ページ2
予約確認画面を念のためスクショして、サイトを閉じた。
これが済めばもう少し動きやすくなるかな、という期待と、子どもの頃からの嫌な思い出の反芻と。
あの伊沢さんが痛くて冷やすって、どのくらいなんだろう。怖。
やらないという選択肢は最初からないけど、ずっと注射は苦手だ。
次の会議の為に席を立ちながら、もしかして一緒に予約すれば良かったかな、と一瞬だけ誰かの顔がよぎって、女子みたいなことを考えた。
いや、これは気づかなくて正解。
びびってるのがちょっとでも顔に出ようものなら一生言われる……ここは一人で頑張る。
会議が終わったのはちょうどお昼過ぎで、そのまま昼食を調達しようと玄関で靴を履いていると、背後から
「山本ー、昼行く？」
さっきまでホワイトボードをグーで攻撃しながら熱弁してた怖い、いえ熱い新入社員の声がした。
「うん、ファミマ」
「そこセブンにならん？」
「いっすよどっちでも」
コンビニのブランドに拘るほどグルメじゃないし。
「何か買ってきます？」
「いや俺も行くわ。外出たい」
さっきの会議の最中、須貝さんボリューム壊れてるよーと思いながら横目で見た窓の外が、限りなく怪しい雲色だったのを思い出した。
「傘要りますかね」
「念のため」
言うと同時に靴を履き、一本だけビニール傘を抜き取る須貝さん。
話も早けりゃ動作も早い。
この人とのやりとりの快適さに慣れると、それはそれで困るんだけどね。
「なあ、さっき俺、やらかしてた？」
オフィス周辺のコンビニの中では、セブンが一番遠い。いっても10分もかからないけど、都内でコンビニまで徒歩10分て中々の距離感よね。
「いえ別に、ああ、声はめっちゃでかかったんでもうちょっと」
「いやそこじゃなくよ」
さっきの煮え切らない議論がまだ彼の心の中で燻ってるのが、言葉の強さから伝わってくる。
あ、成程ね。だからセブンなんだ。かんりか。
いつもの話半分拝聴モードからフルモードに切り替えますね。
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作者名：しまむら | 作成日時：2021年7月10日 10時
