先輩の背中に３【岩泉一】

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月曜日は、岩泉先輩に会わなかった

というか1週間、岩泉先輩に会わなかった


あんまり気にはしていない

だって岩泉先輩は私にとって手の届かない人だから。

岩泉先輩はかっこよくて優しくてすごい人

対して私は全然可愛くなくて、優しくもなくて、図々しい岩泉先輩のただの後輩

岩泉先輩は優しいから私に構ってくれているけど、わざわざ私に会いたいとは、思わないと思う。



そんなことを金曜日の下校途中に考える


「あれ、Aちゃん？？」

「…！及川先輩、こんにちは」

「こんにちは」


岩泉先輩は…

キョロキョロと見渡すけど姿は見当たらない


「岩ちゃんはいないよ」

「へ、す、すみません」


そう言えば及川先輩は、ははははって笑った

どうして笑うのか全くわからない

「Aちゃんは本当に岩ちゃんのことが好きだね
俺に会うのに岩ちゃんの影を探す女の子、Aちゃんくらいだよ」

「えっ…岩泉先輩はかっこいいです」

「あー、ごめんね。
嫌味とかで言ってるわけじゃないんだよ
俺、すごい嬉しいんだ」




いつもは、学校にいるときに女の子にみせる笑顔はお花が周りに咲いたみたいな笑顔をみせる


だけど今、及川先輩は優しい空気をまとう

綺麗な顔の口角をあげるんじゃなくて、緩むって言った方が正しいと思う

彼が意識して笑うとか、相手のご機嫌をとるために笑うとか、ただ楽しくて笑うとか、そういう笑顔じゃなくて

慈愛に満ちた、お母さんみたいな、とっても優しい笑顔

暖かくて、いつもの及川先輩からは想像出来ないくらい優しい、柔らかい空気



「俺、岩ちゃんの1番の友達だけど、岩ちゃんの魅力に気づいてくれる女の子全然いないんだもん」

「岩泉先輩はかっこよくて、優しくて、」

「うん」

「私、好きです。岩泉先輩が、大好きです」

「うん、嬉しいよ」


及川先輩は柔らかい空気をまとうのをやめる


「そう言えばメガネ変わったね。よく似合ってるよ」

「ありがとうございます」

「いえいえ」


「…あ、岩泉先輩の、…その…タイプの髪型って分かりますか？」

「え？」

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