先輩の背中に３【岩泉一】

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「ここの道は右です」

「ん」

手を繋いで歩いて帰ることが出来るのはすごく幸せ

だけど


ご近所さんに会いませんように!!!


男の子と歩いてるのを見られるのはちょっとだけ恥ずかしい

それが手繋いでいるのなら尚更


「ここは？」

「真っ直ぐです」

「ん」


先輩がん、って頷くのはすごく好き

おう、って言うのもすきだけどん、の方が好き

言葉では説明出来ない、理屈じゃない

先輩のん、が好き

ちょっと変態っぽい？？


「あ、家、ここです」

「へー、結構でかい家だな」

「あ、ありがとうございます？？」


先輩の手を離して頭を下げる


「ここまで送ってくださってありがとうございました」

「いや、いい。気にするな」


先輩は私の頭に手を置いてそっと撫でる


「家の人、帰ってないのか？
電気ついてないけど」

「あ、お母さんはお仕事で夜遅くとか、朝帰りとか、…帰ってこない日もありますけど…」


そう言うと岩泉先輩は眉をひそめた


「そうか。お父さんは？」


「…私が小さい時に交通事故で。」


言おうか少しだけ迷った

嘘をついた方がいいんじゃないかって思ったけど。

岩泉先輩に嘘はつきたくなかった


「悪い」


先輩はしまったって顔をした

なんだか申し訳ない


「いえ、先輩が謝ることじゃないですよ。
しょうがないことと言えばしょうがないんです
それに、会ったこともないから、私にはお父さんがいるということが分からないんで。
寂しくもないんで大丈夫ですよ！」

先輩にそんな顔をして欲しくない


「ほんとか？」

「…え？」

「ほんとに寂しくないのか？」

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