笑顔と、花言葉～図書館戦争～ (ページ15)

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15.市街哨戒でもトラブル発生ページ15

｢アホか貴様！｣

ただいまお店の裏でお説教中。
郁が堂上教官に怒鳴られてる。

｢でもっ、あの人も同じことをしました！｣

言い返せるなんて、郁の度胸はほんとすごい。
あの人ってあれだよね、郁が高３のとき、書店で助けてくれた図書隊員さん。

｢そいつもバカなんだ！そいつは単なる規則無視の無鉄砲のバカだ！辞めたほうがマシだ！｣

｢ちょっとやめてよあたしの王子様に！！｣

その途端、隣にいた小牧教官が吹き出す。スイッチが入ったのか笑いは止まらない。
玄田三監もだ。

郁と堂上教官はお互い黙り込んでいる。

｢あ、あれ、芹沢さん、ﾌﾞﾌｯ…王子様、のこと、し、しらない、の？｣

小牧教官が息も絶え絶えに私にきく。

｢え、なにがですか？｣

｢笠原さんの、王子様が、堂上だ、ってこと。｣

・

────え？

え、え、

｢うそっ！？｣

だって郁、これまでさんざん王子様について、堂上教官の目の前で語ってきたのに！？

｢ほんとだよ。俺ら、研修で関東を回ってたから。｣

小牧教官はニヤニヤしながら２人を見た。

さっきの小牧教官の衝撃の言葉は、郁の耳には届いていなかったらしく、さっきの男の子に絵本を手渡しに行っていた。

｢そんなことって、あるんですね…。｣

｢そういえば、芹沢さんも憧れてる隊員がいるんだっけ。ヒーロー、みたいな人？｣

うわああ！言わないで！

と思ったけどあれ？

｢なんでその単語知ってるんですか？｣

私の問いかけに、小牧教官はまたまた私をびっくりさせた。さっきほどではないけれど。

｢だって俺、面接官やってたから。｣

｢えっ！そうなんですか！？｣

面接のときのことを思い出す。

検閲抗争に巻き込まれたことを言ったら、熱が入っちゃったんだよね。

“まるでヒーローみたいで、かっこいいなって”

話し終えたあと面接官の何人かがうつむいてた。
思い出したくないことを私が蒸し返しちゃったって、今でも申し訳なく思ってる。

｢ていうか、あんまりその単語言わないでくださいね！？かなり恥ずかしいんです！｣

｢はいはい。｣

教官は笑って、冗談か本気かわからない口調で言った。

｢芹沢さんのヒーローも、案外近くにいるかもしれないね。｣

────もう、知らない！