笑顔と、花言葉～図書館戦争～ (ページ14)

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14.市街哨戒でもトラブル発生ページ14

郁、足速すぎだよ。

私が息を切らして書店に着くと、時すでに遅し。

｢こちらは関東図書隊よ！｣

ああ、郁…。

｢見計らい図書とすることを宣言します！｣

ご愁傷様。

その途端、良化隊員たちは爆笑。

｢え？なんで？｣

頭にはてなを浮かべる郁に耳打ちする。

｢はあっ、郁、見計らいの、権限はね、図書正、以上じゃないと、使えないのっ。｣

｢えっうそ！｣

素で驚く郁。
ほらやっぱり。

良化隊が回収している本をちらっと見る。
その中には、さっき男の子が背中に隠した絵本も含まれていた。

男の子はじりじりとレジに近づいていく。
そう、検閲対象図書を買うことは罪には当たらないから、買ってしまいさえすれば。

時間を稼ごう。

｢なぜこの本が駄目なんですか？｣

息を整えながらたずねる。

｢著者の経歴に問題があるからだ。｣

良化隊員は表情を変えずに言った。

そんなの、本の内容に関係ないじゃん。
ただ楽しみたいって、それだけで本を読んじゃだめなわけ？

そう言おうとしたとき、１人の良化隊員が男の子の本を取り上げようとしていた。

｢あっ、｣

思わず声が出る。
こんなにすぐ見つかっちゃうなんて。

その声に反応したのか、他の良化隊員たちも私の視線を追う。

とっさに私は男の子を庇うように立っていた。

｢何をしている。どけ。｣

冷たく放たれた言葉にすくみそうになる。
気がつくと、自分より10cmも20cmも高い男性に囲まれていた。

｢どけと言ってるんだ。｣

良化隊員に腕を掴まれる。

ふと浮かんだ。
小牧教官。
そうだ、来てくれるはずだよ。

そう思うと怖さがかき消えた。

｢いやです。｣

きっぱりと言って腕を振り払う。

｢この子が絵本を読んで、何の悪影響があるんですか？あなた達はこの絵本を読んだんですか？
中身を知りもしないくせに、著者の経歴だけで本を取り上げようとするなんて間違ってます。｣

良化隊員の顔が歪んだ。
正論をつかれたらしい。

｢いいからどけ！｣

はっと気づくと体を突き飛ばされていた。

転ぶっ！

その瞬間、誰かの腕の中にいた。

あ、この感覚知ってる。
前にも何度か…。

振り向くとやっぱり、

｢小牧教官っ。｣

｢遅れたが、二等図書正２名に三等図書監１名だ。不足あるまい。｣

そこには、玄田三監と堂上教官もいた。