笑顔と、花言葉～図書館戦争～ (ページ13)

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13.市街哨戒でもトラブル発生ページ13

今日は初めての市街哨戒。

訓練も大詰めだ。

哨戒は、私と郁、それぞれのバディの小牧教官、玄田三等図書監の４人で行く。

小牧教官と堂上教官は二等図書正だから、玄田三監はそれより２つ上の階級だったかな。

４人が車に乗り込むと、玄田三監が苦笑いしながら郁に言った。

｢笠原、顔は大丈夫か。｣

郁はこの間の館内警備のとき、犯人を取り押さえるのが甘かった。
それで犯人がトイレから飛び出してきて、私が少しケガをしちゃったんだけども。
そこで郁は堂上教官に頬を叩かれた、と。

｢はい、もう大丈夫です。｣

郁が恥ずかしそうに応じる。

｢堂上教官に厳しくされてた意味もわかりました。スポーツ気分で訓練してたんだって。｣

｢おう、そうか。
ところで笠原、堂上はあのときの犯人確保者笠原にしてたぞ。認めてる部分もあるからな。｣

へえ、それは知らなかった。
堂上教官優しいとこもあるじゃんね。

しばらく４人で車の中で話していた。

信号が赤になり、小牧教官が車を停める。

反対車線をふと見ると、

｢あ、検閲。｣

良化隊の車が停まっているのを見つけた。

書店がその奥にある。

５、６才の男の子が、大きめの絵本を背中に隠したのが見えた。

他の３人も気づいたらしい。

｢早く行かなきゃ！｣

郁が車のドアを開けようとする。

｢郁、なにしてんの？｣

｢検閲！見過ごせないじゃん！｣

まっすぐに言う郁に、玄田三監ははっきりと言った。

｢だめだ。民間書店は非武装緩衝地帯だ。
笠原、俺達は正義の味方じゃないぞ｣

その言葉は、郁だけでなく私にも刺さった。

私も郁も、────ヒーローと王子様という言い方に違いはあるが、
正義の味方に憧れてきたんだ。

玄田三監の言葉はその通りだけど、飲み込めないでいる。

｢…見計らい図書の制度があります！｣

郁は車を飛び出して行ってしまった。

え、見計らい図書って言った？
だめだ郁、座学ちゃんと聞いてない！

｢待って郁！｣

私も郁を追いかけて飛び出す。

ちょうど信号が青になり、小牧教官は車を発進させるしかない。

きっと大回りして書店に向かうだろう。

車から出るとき、小牧教官があははっと笑うのが聞こえた。