笑顔と、花言葉～図書館戦争～ (ページ12)

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12.火がないと思っていても煙は立つページ12

｢それにしてもA、やるじゃない。｣

柴崎が笑顔、いやニヤニヤした顔をこちらに向け言い放った。

｢小牧教官にお姫様抱っこされたんですって？｣

えっっ、なんでそれを！？

｢隊内で出回ってるのよ。みんな言ってたわ。｣

まじかぁぁぁぁぁぁ！
やってしまった。
場所的にも目撃者はいないと思ってたのに！

｢柴崎、その噂はデマだと広めてくれ。別に私は、小牧教官を狙ってるわけじゃないし、お姫様抱っこだからなんだし、てかお姫様抱っこなんかじゃないし。｣

｢誰も狙うなんて言ってないわ。
なんで芹沢さん早口になってるの？？？｣

柴崎がニヤニヤ顔のまま覗き込む。

あれ私何言っちゃってんの？
狙うってなんだ。なんでお姫様抱っこって言葉に反応してるんだ。あれは｢ただの｣姫抱き。そもそも姫とかいう単語使うから…

頭の中がごちゃごちゃしていく。
ここはどこ私は誰状態だ。

｢ふぅん、そういうことね。｣

柴崎はすっごく楽しそう。

｢わわ、私っ、ジュース！買ってくる！｣

何故かはわからないが部屋を飛び出した。

・

自販機のあるロビーまで到着。

切れていた息が戻ると同時に、さっきの会話が思い浮かんでくる。柴崎になんて言われた？

小牧教官にお姫様｢きゃああっ｣

思わず声をあげてしまう。

と、そこへ。
神様はイタズラがお好きなようで。

｢芹沢さん、なにかあった？｣

ふふっと笑いながら現れた小牧教官。

今度は声が出ない。

｢あ、今日のケガ大丈夫？割とすぐに手当てしたから悪くなってないはずだけど。｣

今日のケガ。
それを聞いて“お姫様抱っこ”と言う単語が浮かび上がって脈が速くなる。

｢は、はい、もう大丈夫です、あの、手当てとか、色々、ありがとうございましたっ｣

口から出たお礼は、早口でつっかかっていた。
動揺してる。

｢いいのいいの。それよりケガさせちゃってごめんね？これ、お詫びってことで｣

小牧教官はそう言って優しく笑って、私にサイダーを手渡した。

｢それと芹沢さん、もう少し体重つけてもいいとんじゃない？？女の子だからってのもあると思うけどやっぱり軽いよ。柔道も不利になっちゃうし。｣

っ！

軽いって言われて少し嬉しいのと、お姫様抱っこの恥ずかしさを思い出したおかげで暑い。
まさか教官本人から言われるとは。

｢はい、がんばります…。｣

部屋で飲んだサイダーはいつもよりずっと冷たたく感じた。