番外編/泡沫の夢、余生という奇跡３ ページ21
.
「今日は肉じゃがでも作りましょうか」
「きゃんっ」
一週間前には満開であった桜小路を通り、小さな公園の前を過ぎる。
ここの桜は完全に花が散った後のようで、枝には青々とした若葉が揺れていた。
「今年の春も、もう終わりですね……」
「きゅうん……」
「ポチくん？……おや、あまり見かけない人ですね。最近引越して来たのでしょうか」
日本には珍しい青みかかった黒髪が俯く顔を隠して表情は見えない。
なのに何故か既視感を覚え、首を傾げる。
最近、それも本当に間近に会ったような……
……ああ、そうだ。夢で、見たのだ。
(たしか、私たちが消えて人に生まれ変わって、人として死んだ。そんな夢だった)
細かな内容は覚えていないが、大まかにいえばこんな感じだったはず。
そして彼女は、たしか私が保護した■■■の■■だ。
「夢で会った人と現実で再開するなんて、不思議なこともあるんですね。……あ」
「…………！」
視線が、交わった。
彼女の目は水色で、更に私の国民ではないと国としての勘が告げる。なのに、この子は日本の子だと心が訴えていた。
『――「二ホン」での居場所を。だから、君にお願いしたいんだ』
彼女とよく似た彼との、遠い未来からの約束。
終わった私たちの、ボーナスステージのような人生。
助けを呼べずに衰弱した、彼女。
白昼夢のように知らない光景が脳裏に浮かび、
……これは知るべきものじゃない。
だってこれは、私の
同時にこれは白昼夢……
……わからない。
わからないけれど、彼女の手を掴まなければいけない。
一人にしては、いけない。
「「あ、あの！」」
熱に浮かされたままに声を上げる。
気付いたら互いに腕を取っていた。
.
番外編/泡沫の夢、余生という奇跡４→←番外編/泡沫の夢、余生という奇跡２
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 10人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
