番外編/泡沫の夢、余生という奇跡２ ページ20
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アマノはとてつもなく嫌そうな表情をしながら、短くなった私の髪に触れる。その時に空気が揺れて、今まで隠れていた首回りに風が当たって少しだけ寒いと感じた。
「だいたい僕らが出会ったぐらいの長さ？懐かしいね。そういえばその恰好もあの時のもの？」
「流石に同じものではないよ、時間が経って傷んでるし」
「なるほど、君が心中に前向きなのはわかったよ。
……でも、だからと言って君まで巻き込むつもりはないんだよね」
――言葉が持つ意味を理解したくなくて、思考が停止する。質の悪い冗談だと隣を見るが、その表情は儚げに笑っていた。
その一瞬の隙に、アマノは私の指輪をそっと外す。
「君は僕と命の共有をしていたから、奇跡の枠は埋められたと判断されていた。……契約を破棄すればどうなるか、わかるよね？」
「……ッ、あいつともグルなの！？お前ら仲悪いじゃん！」
「HAHAHA、利害の一致ってね！
いつかのように溢れる光に視界が潰れる。悪役のように笑う彼に腹を立てながら、最後に一発殴ればよかったと後悔を零す。薄れゆく意識を前に、彼の言葉が聞こえた気がした。
「……いままで、ありがとう」
……ああ、もう。
これだから嫌いなんだ、バーカ！
＊＊＊
『もし、世界が終わるとして。彼女に与えるものは――』
『……だから、君にお願いしたいんだ』
そんな約束を、誰かとしたのだ。
いいようのない息苦しさに、日本は目を覚す。
老体に鞭をうって上体を起こしてみれば、胸の上にたまさんが気持ちよさそうに眠っていた。
(な、なんて可愛いのでしょう……！うう、この重さなら甘んじて受けます……！)
人が猫の可愛さに勝てないのなら、国だって勝てる筈がない。この日見た夢なんてすっかり忘れ、日本は愛猫の愛らしさに悶えた。
……日本にとって、今日は数少ない休暇だ。
こんな日ぐらい、ゆっくりペットと戯れていたい。
そんなことを朝まで考えていたが、結局このあと撮り貯めたアニメの録画を一気見した。それと冷蔵庫の食材がそろそろ切れそうだからスーパーへ買い物にも出かけた。
まさに日本人あるある。
けれどもまだ動いているだけましなのが悲しいところだ。
＿＿
続く
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