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イソップside
賑やかな所は苦手だ。こういう静かな所が良い。
テラスの柱の陰に隠れてグラスに注がれた血のような色をしたワインを口につける。
今荘園はお祭り騒ぎの真最中。なんでも新しいサバイバーが来たとかで。事前に配布された資料に記載されていたのは1枚の写真と役職と外在特質のみ。
「謎多きサバイバ((『わぁ、空綺麗!見てよイライさん!』
不意にアルトボイスが響き、僕はワイングラスを落としそうになった。
僕は柱と一体化しようと更に身を寄せた。
『こんなに空が綺麗だなんて知らなかったな…向こうにいた頃は空じゃなくて敵の顔色ばかり見ていたから…』
確か新しく来た人は軍人だったっけ。
この荘園には何人の軍関係の人がいたかな…と考えていると、別のアルトボイスが響いた。
「空も素敵だけど君の姿の方が素敵だと思うな」
『血に塗れたこの姿が?一生消えない傷を心体共に傷つけられたこの体を?
……面白い人ですね』
「よく言われるよ」
軽く誘うような言葉をかける占い師ことイライさんが目を細めるのが目隠し越しにも分かる。
『あ、流れ星』
「願い事はしたかい?」
『3回も長ったらしい文なんて言えるとでも?』
「簡単に表したらどうだい?」
『そうですね。イライさんも一緒に星にお願い事をしませんか?』
星に願うなんて…子供らしいというかロマンチックというか………
そんな事を考えている間に2人の願い事は終わっていたらしい。
楽しそうな声が聞こえてくる。
『貴方は何を願ったんです?』
「はかない願いさ。叶うかどうかも分からないのに。……君は?」
『僕は…………すみません、彼方で女性が呼んでいますので失礼させて頂きます』
テラスのドアを開ける音。2人分の呼吸音が取り残される。
「あーあ、はぐらかされちゃったなぁ。ねぇ?イソップ君」
貴方の点眼は本当に都合が良いですね。と赤いマスクを押し上げ、適当に返す。
「君は彼の願いは聞こえた?」
「いいえ。そもそも口に出しませんよ」
イライさんは「そうだよねぇ」と笑って頭を掻きながら室内に入っていった。
本当は聞こえていた。
『お兄ちゃんに会いたい』
って蚊の鳴くような声で呟いて一筋の涙を流していた事を。
僕はその願いが無事に実を結ぶように祈る事しかできない。
まぁ、ここにいる以上はそんな奇跡の様な事は起きないのだが。
マスクの下で彼を嘲笑う僕の上を一筋の星が流れていった。
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くろねこ(プロフ) - ありがとうございます!でき次第、送りますね〜! (2020年3月4日 9時) (レス) id: 754674e882 (このIDを非表示/違反報告)
瑠璃&リィル(プロフ) - くろねこさん» ぴぃやぁぁぁぁ!!(煩い)LINEから来てくださったんですね…ありがたやありがたや……主人公ちゃん書いて下さるんですか!?えーと、朝になったら小説用の垢載せときますんでそこに送って頂けたら幸いです!本当にありがとうございます! (2020年3月4日 0時) (レス) id: df3d8cbea7 (このIDを非表示/違反報告)
くろねこ(プロフ) - LINEの第五人格のやつ(語彙力なさ過ぎかこいつ)で流れていたのをポチったらめっちゃ素敵な作品でコメント秒速で打ってますw!!ゆっくりで構いませんのでぜひ完結まで見させて下さい!あと、宜しければ主人公ちゃん描かせて下さい! (2020年3月3日 23時) (レス) id: 754674e882 (このIDを非表示/違反報告)
瑠璃&リィル(プロフ) - 第五愛さん» 毎日!?話数少ないのに!?こんな駄作なのに!?……ありがとうございます!全身全霊をもって更新頑張らせて頂きます! (2020年3月3日 10時) (レス) id: abf8076506 (このIDを非表示/違反報告)
瑠璃&リィル(プロフ) - Laylaさん» ありがとうございます(´;ω;`)更新頑張らせて頂きます…! 何気に初コメですね……!! (2020年3月3日 10時) (レス) id: abf8076506 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:瑠璃&リィル | 作成日時:2020年2月25日 19時