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師匠が買い物に誘ってくれることは早々無かった。何時も師匠は私の知らない間に凡てを終わらせ手伝う暇さえ与えない。だからこそ嬉しかった。師匠の手伝いが出来る、そう思ったからだ。
「師匠!今日の御夕飯は何ですか!?」
「そうだな。鍋にでもしようか」
「うふふ、嬉しいです!!」
師匠は野菜を手に取り何れが美味しいか、目を凝らして見極めていた。その師匠の顔がとっても面白くて、私はふわふわとした気持ちになっていた。
買い物の手伝いをしてくれたお礼、とお菓子を1つ購って貰い私は大事そうに抱き抱え持っていた。師匠は微笑ましく私を見ている。
「一葉ッ!!」
「はい?」
師匠の焦った声。
ドン、と突き飛ばされる私。
そして紅に染まっていく私の大事な
何が何だか判らなかった。
何で師匠が紅いの?何で師匠のお腹から紅が溢れだしてるの?何で?何で?何で?
どうやら師匠は通り魔に刺されたらしい。けれど幼い、其れもテンパっている私にはそんな状況を考える暇も理解する暇も無くて。ずっと、ずっと師匠の傷口を押さえていた。
「…逃げろ、一葉」
「師匠、ほら、起きて。私を置いいかないで」
例え前世の記憶を知っていたとしても、覚えていたとしても、目の前で大切な人が死ぬのを見て冷静でいられるほど私は冷めては居なかった。
「異能力――『
師匠が力のない声で呟いた。
「お前は生きるべきだ。喩え、私が側に居なくても、お前は、大丈夫、だって……こんなにも、優しい、子、じゃないか……」
次の標的を私に変えた通り魔は魂を抜かれたように死んだ。師匠の異能のせいだ。段々と蒼くなっていく師匠の躯を私は唯見つめる事しか出来なかった。
師匠は私の頬に伝った涙を拭いそして云ったのだ。
「私よりも、大切な、人、を、見つけろ。私、よりも、信頼、の、できる人、を、見つけろ。私、は、常に、お前、の、見方、だ。迷え、足掻け。そして――――生きろ」
云いたい事だけ云って私の返事は聞かず、師匠は死んだ。私は泣いた、咽が潰れるぐらい叫び目から血が出てくるのではないか、と云う程叫んだ。
その日の夜は月が迚綺麗だった。
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