元ヤンと変人ポエマーワールドトリガーへトリップ！？2 (ページ17)

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▽第三十二話ページ17

私は意識がシャットダウンしている。それは、頭を駆け巡る走馬灯の中、何故か理解した。気絶した直前の記憶まで持っていたからだろうか。

ところで、私には思い出したくない記憶は特にない。天界でならまだしも、ワールドトリガーに来る前の世界ではそこまで不幸というわけではなかった。

人をパシリにする兄だったり、それを認めている母だったり、帰って来ない父だったり。普通とは言えないし、不幸とも言えない過程で賞が取れそうだ。

時々愚痴は吐くけれど、嫌だったり、死にたくなったり、そんなことは一度もなかった。もはや天界よりも純粋な世界なんじゃあないかと思っていた。

ただ、シナノちゃんという、小学生からの友達は私の前世を知っていて、最もいい友達だったんだよ、とくすくすと笑っていた覚えがある。
兄はいつも通りバカで、母は何かを隠している気がして、シナノちゃんの名前を出すなと怒鳴ったこともある。父はもちろん、兄に沿って何も知らない。

シナノちゃんは、前世での名前を＿＿＿。あぁ、思い出せない。思い出したくないのかもしれない。私の中の『私』が思い出すことを拒否しているのかもしれない。

それでも私は思いだす。

シナノちゃんは紅葉の姉で、母は凛の母だったそうだ。両方天才というわけではなかったが、神になりたての私とは丁度いいライバルになった。

シナノちゃんも確かワールドトリガーが好きで。迅さんが好きで、すごく趣味が合った。でもある日シナノちゃんは突然消えた。今の私なら、彼女が転生したのだとわかる。私の母は、私が転生する直前まで私の世界に居た。

今、彼女達はどうしているのだろうか。

浮遊する意識の中、私が思ったのはそれだけだった。凄く、本当に凄く仲が良かったシナノちゃんだから、もしかすると母よりも無事が気になるかもしれない。

それに、頑張ってねとかいうあの声は、本当に日向さんの母の声だっただろうか。

分からない。
分からない。
全てが分からない。

＿＿＿あぁ、思い出せぇ―――！