瑠璃色、揺れる【Satoshi.O】 (ページ31)

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「・・・え」

ドアが閉まりきってすぐ、智が無言でズカズカと前に出て

エレベーターのドアをガン！と蹴った。

「大野さん！コラ！やめなさい！」

そのあとすぐに元の位置に戻り、私のことを一瞥してポケットからスマホを取り出す。

「若手女優からベテラン女優、共演者がみんなメロメロになる5つの理由」

「なに！急になに！怖い怖いよ！」

和也がそう言いながら画面を覗き込む。

どうやら小野さんの記事を調べてるらしい。

「多田志帆、失恋から路上で号泣」

志帆は去年映画で共演して私の化粧用品をぶつかったなんて言って床に落とした子だ。

嫌い・・・

「俺あの女嫌い」

「私も！」

「香水臭いんだよ。人によって声変えるのもキモい。翔ちゃんのこと大好きだよアイツ」

「わかる！私よく足踏まれたよ」

「俺は小野が嫌い」

タイミングよく地下につき、智がズカズカと降りていく。

「ちょっと待ってよ」

慌てて追いかけて腕を掴むと、智はあﾞぁﾞ！とイガイガな声を出して、振り返る。

「・・・こういうことがしたいわけじゃない」

「うん」

「おかしいな。ニコチン切れてんのかも」

智は、私が掴んでない方の手で、

ポンポン、と私の頭を撫でた。