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「あ、ニノだ」
翔ちゃんのスマホが、机の上で細かく振動する。
オンラインに生きる男、二宮和也
「私出てもいい？」
「いいよ」
翔ちゃんからスマホを受け取って、画面をタップして耳に充てる。
「もしもし？和也？わたしわたし」
和也は同級生で、小学校の1年生から高校卒業までずっと同じクラスだった。
偶然だ。それも運命に近い。
そのおかげで私は、クラスに友達がいなくても生きてこられた。
電話の向こうで、私をボッチの青春から救ってくれた男がつまらなさそうに受け答えをしている。
彼はツンデレだ。
「え？智？うん、一緒にいたけど」
そのツンデレ男の要件というのは、智がすこぶる機嫌が悪い、ということだった。
「智くんがどうしたって？」
電話を切って翔ちゃんに返す。
翔ちゃんは唐揚げ定食を米一粒残さず平らげている。
「すこぶる機嫌が悪いって」
翔ちゃん以外の嵐のメンバーはもうテレビ局にいるらしく、ドラマの打ち合わせを終えてやってきた智は
話しかけられないほどの殺気を放って、静かに相葉ちゃんに1発肩パンをしたらしい
「たぶんあれだ、また社長に言われたんじゃない？」
「え？なにを？」
「・・・え」
翔ちゃんが、コップでお茶を飲みながら、大きな目をクリクリさせて固まった。
「なに？またってなに？」
「じゃあ行こうか」
「翔ちゃん」
翔ちゃんがトレーを持って立ち上がる。
いそいそとトレーを返却して、わたしを見ないように上を向きながら早歩きで食堂を出る。
「翔ちゃん！」
翔ちゃんの反応で、わたしのことで呼び出されていることはわかった。
・・・なんで、3年間うまくやってきたのに。
言われた通り、外で一度も食事どころか、会ってすらない。
「・・・わかった、話すから。とりあえずマネージャー呼ぶわ」
翔ちゃんが、観念したようにスマホを耳に当てた。
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作者名：くろーばー
| 作成日時：2019年6月10日 22時
