◆*02*◆ ページ2
「カット！」
監督の力のこもった声がスタジオに響き渡った。
ドラマの撮影。時刻は深夜0時を過ぎた頃だ。
「Aちゃん、いい！すごくよかった！確認するからその間休憩してて」
「ありがとうございます」
スタジオをでて楽屋に戻り、張った気を抜くために大きく息を吐く。
今日も帰れそうにないな・・・
私の仕事は、かなり特殊だと思う。
演じる、仕事。
俗にいう、ゲイノウジン。部類は、ジョユウ。
私は生まれた頃から、この仕事に就いている。
子役事務所にはスカウトで入った。
物心がついた頃にはもう、この業界にいることが私の当たり前だった。
だからなんの抵抗も抱くことなく、自分じゃない誰かを演じることが私の生活だった。
コンコン、と軽快なノック音が、どこかに飛んでいた意識を自分に戻す。
はい、と返事をすると、ゆっくりとドアが開いて、マネージャーが顔をのぞかせた。
「お疲れさま」
「うん、疲れた」
マネージャーのみっちゃん。
ミツオっていうから、みっちゃん
年は38歳、私のマネ歴は6年。
私が16歳の頃からの付き合いだから、大抵のことは全部わかってくれている。
ちなみに私は、現在22歳。
「電話きてたよ」
「ほんと？何時頃？」
「11時頃」
「今日中に終わるはずって言ってたの、また嘘ついちゃった」
この仕事は、不規則だ。
私は大学と両立しているから、なおさら自由な時間は少ない。
「・・・怒ってた？」
私は約束を破る天才だ。
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作者名：くろーばー
| 作成日時：2019年6月10日 22時
