消えぬ想い～K.N～② (ページ11)

今日:4 hit、昨日:8 hit、合計:62,104 hit

妄想。ページ11

それから。
さっそく二宮くんはあまり学校に来なかった。
これはまさに神様のイタズラで。
会いたくないときに会って、会いたいとき会えない現実。
仕事なんだろうと分かってはいたけど、さすがにあんなに浮かれていた私も金曜日の今日、落ち込まずにはいられなかった。

帰り道、寂しさを誰かに伝えたくなって、いつもの橋で『会いたいよー！』と川に向かって叫びたくなったけど、心で叫ぶだけにした。

私は色んな妄想をした。
週末になったら、一緒に歩いてクレープ食べたり、一緒に公園でバトミントンしたりすのかなとか。
本屋で見たこともなかった雑誌を手に取って、どこへ行こうかって1人行った気分になってニヤニヤして。

そんな帰り道、思いもよらない場所で、私の胸はドクリと音を立てた。
そこは私の家までもう一息。最後の曲がり角で小さな公園がある場所。
そこの電信棒にもたれかかって、深く帽子を被って、ポケットに手をつっこんで、ネルシャツを着た私服の二宮くんがいた。

まだ私に気づかない二宮くんはただボーっと一点を見据えていた。
ドキドキしながら、今にもスキップしそうな気持ちを抑えて、ゆっくりと近づいて、普通の声が聞こえる距離まで行くと二宮くんは私の存在にようやく気付いて私を見た。

「おかえり。」

「...どしたの？こんなところで。」

今にも顔がニヤけてしまいそうで、頬を押さえながら言った。

「なんで、ほっぺ押さえてんの？」と言いながら、私に一歩近づいて私の顔を覗き込んだ。

私は恥ずかしくて一歩後ろに下がった。

「...ううん、何でもない...よ。」

「あーそ？あのさ、そこの公園ちょっと寄れる？」

私はほっぺを押さえたままコクンと頷いて答えた。

見慣れた公園だけど、入るのは久しぶりで懐かしい感じがした。この公園は沢山子供が遊んでいたけど、最近は近くに大きい公園が出来てからは、子供たちが遊んでいる姿をほとんど見かけなくなった。

「ここいいな。静かで。」

そう言って二宮くんは、錆びたブランコに手をかけて座ると、小さくユラユラと揺らし始めた。
二個しかないそのブランコの隣に私も座ってカバンを膝に置いた。
ここからみる景色懐かしくて。
昔から全然変わってなくて、斜め前に滑り台があって、奥の方には鉄棒が並んでいて、右側にはいつもお母さんが座っていた傘の形をしたベンチがあった。