消えぬ想い～K.N～ ① (ページ29)

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姉弟。ページ29

「何で？」って言いながら私に近づいて来る。

私は突然会えた喜びとドキドキが止まらず何も答えられず二宮くんを見つめた。

「おかえりー。遅かったね？」

「ってかだから何で？しかも姉ちゃんと。どゆこと？」
私の前に立った二宮くんに、お姉さんが説明をしてくれた。

「...とゆうことです。」
ようやく発した言葉はこれだった。

「ふーん...」

「そこはありがとうでしょ？！」と言ってお姉さんは二宮くんの頭を叩いた。

「いって‼今言おうと思ったんだよ！お前のせいで礼言う気失せたわ。」そう言って頭を抱えた。

その言葉を皮切りに口ケンカが始まった。私はそれをただ見ることしか出来ず、固まった。

「かず‼とにかく！Aちゃんもう帰るから送っていきな！」

「分かってるよ！ってか何馴れ馴れしくAちゃんなんて呼んでんだよ。何から何まで腹立つ奴だな。行くぞ！」
そう言ってまた私の手首が掴まれて、引っ張られた。

「Aちゃん気を付けてねー！特にその隣の人には！」

「お姉さん、あ...ありがとうございました！」
「礼なんて言わなくていい。」と二宮くんがボソッと言った。

二宮くんは私の手首を離して原付に手をかけて、原付を引いた。

「歩きで送らせて。」と言われて私はコクンと頷いた。
駅とは逆方向に歩き出して、すっかり日は落ちていて、満月の薄明かりが私たちを照らした。

「...あのさ。」

「うん。」

「姉ちゃんと何話したの？」

「え？特には...。あ、ワンちゃんの名前ハルって言うんだね。」
ペット飼ってたのも今日初めて知ったけど。

「...うん。他には？」

「ん～～別に大した話はしてないよ？テレビの話とか、学校の話とか。そんくらい。」
正直何話したのか全部吹っ飛んでる。今、二宮くんに会えた嬉しさが優って。思い出せない。

「なら...いいんだけど。」

「ふふ...うん。」
横に並んで歩けてることが嬉しくてつい笑いが溢れた。しかも私服だから、なんだかいつもと雰囲気が違うような気がしてドキドキする。

「...なんか。今日。...雰囲気違うな。」
一緒のことを二宮くんが言った。

「柴崎。あのさ...。」

「ん...？」

二宮くんが足を止めたから私も足を止めた。

沈黙になって、私もどうしたらいいか分からなくて沈黙になる。

「えーっと...あ..あー...ありがとな。」

「え？...うん。...どうしたの？何か変だけど。」

「いや...別に。何でもねぇ。」

そう言ってまた歩き出した。