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「スタイルの希望ある？」
「まだ迷ってて。長さを変えるか変えないかで」
「もしかして、いつも同じ感じ？」
「そうなんですよ。冒険出来なくて」
「Aちゃんはロングも可愛いけど、ボブもええよ。絶対似合う」
そう断言するレンくんが、鏡越しに視線を注いで背後から髪に触れる。
左右の髪の束を掬って、長さを示すように「このくらい？」と顎の少し上を指した。
いつも美容師相手に何の感情も持ったことはなかったけれど、レンくん程のイケメン美容師では肌に指が触れるだけでそこに緊張が走る。
「どう？バッサリいってみる？」
この前、会社の後輩にも同じことを言われた。
自分では似合うかなんてわからないけど、二人に、ましてやレンくんは専門の人な訳で。
似合うと言ってくれるなら、いいかもしれない。
そう思い、目線を上げて口を開こうとした、その刹那。
「待って！！ダメダメ！！」
お店の奥、シャンプー台の方から、頭にタオルを巻かれたカイトくんが急ぎ足で駆け寄ってきた。
とても慌てた様子で、こちらの会話を遮ろうとレンくんのすぐ近くで止まった。
彼の肩に片手を添えて、二人の視線を自分のへ向けようとする。
彼の思惑通り、私もレンくんも振り向けば。
「切っちゃダメ！」
「へ？」
「急になんやねん」
「Aさんはロング！」
「えっと、どうして？」
「ロングが可愛いから！」
「短いのもええと思うよ。雰囲気変わるし」
「雰囲気なんて変わらなくていいの！」
「ちょっと、どうしたの？カイトくん」
まるで駄々っ子のような、子ども返りをした彼の態度に私もレンくんも目を丸くした。
「カイトさあ、」
彼が何かを言い掛けた所で、カイトくんはそれを遮断する。
「俺、ロングが好きだから、Aさんにはそのままでいて欲しい」
先程までの子どもっぽい態度はどこへやら、みるみるうちに大きな瞳を潤ませて、今度は子犬のように見つめてくる。
「Aちゃんの好きにしたらええんよ」
「ダメ、かな？」
私は、カイトくんのそういう所に心底甘い。
そんな顔で見められたら、答えは一つに絞られる。
それに、こんな感情が湧いているとレンくんに知られた時には、きっと酷く引かれてしまうことだろう。
まさか、嬉しいと思っているなんて。
口が裂けても言えない。
「わかった」
「ホンマにええの？」
「うん。迷って決めきれなかったから」
だから私はこう言うことにした。
喜びを露わにする彼を見て、更に嬉しさが増すのであった。
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ルリ(プロフ) - あさみさん» あたたかいコメントをありがとうございます！励みになります。また楽しんでいただけるよう頑張ります^^ (2022年10月29日 19時) (
レス) id: 9b3e1dd9b8 (このIDを非表示/違反報告)
あさみ(プロフ) - こんばんは。毎回ドキドキしながら読んでます！更新頑張ってください！これからも頑張ってください。応援してます！ (2022年10月27日 19時) (レス) @page8 id: cc9b11209e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ルリ | 作成日時：2022年10月17日 22時
