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「仕上がりはいかがですか？」
華麗な手捌きでテキパキと切っていき、目の前の鏡には見たことのない自分が写っていた。
腰の近くまで伸ばしていた長い髪を、肩まで切った。
トリートメントまでしてもらったので髪もツルツル。
まるで魔法のようだ。
「ありがとう。素敵な髪型だよ」
「ほんま？気に入ってもらえてよかった」
折り畳みミラーを当て後髪を確認する。
人生で何度も同じシチュエーションを経験しているはずなのに、彼が相手だとトキメキに変わる。
手に持つそれをパタンと閉じ、彼の視線が鏡の中の私へ移ると、顔がスッと降りてきて私の顔の横で止まった。
耳元に囁くように唇を近づけて、
「可愛い」
彼がそっとそう言えば、全身に震えが走るくらいに興奮していく。
重なる視線の先のその人は、表情を変えずに不敵に笑う。
これは、完全にオフモード。
仕事中の顔じゃない。
「髪の毛ってね、ある種の魔法みたいなもんだと思うんだ。髪型ひとつで雰囲気も変わる。髪の毛がツヤツヤだとその人自身も輝いて見える」
またすぐに仕事モードへと戻ってしまう彼に寂しさを感じながらも、彼の言葉が心に沁みる。
まさにそれは。
「私も今、同じこと思ってた！」
「そうなんや。奇遇だね」
直接目が合っている訳でもないのに、鏡の中から真っ直ぐに見つめられて。
「いつでも魔法をかけてあげるから、また来て」
「ありがとう」
「待ってる」
「あ、もうすぐ開店の時間じゃ」
時間を忘れて二人の時間を楽しみたいけれど、ふと、現実を思い出し彼に問えば「ほんとだ」と時計に目を遣り片付けを始める。
従業員の方達もそろそろ出勤してくるだろう。
残念だが、今日はここまでだ。
「ねえ、レンくん。先にお会計お願いしてもいい？」
「いや、ええよ」
ええよの意味が分からず顔を歪めた私に気づいた彼は、片付けをする手を止めてこちらへと近づいてきた。
「Aちゃんはお客さんやないから、お代は受け取りたくないな」
「でも」
「ならこうしよう。俺ね、喉が渇いちゃったんだけど、コーヒーご馳走してくれない？」
「そんなんでいいの？」
「もちろん。めっちゃ飲みたいんよ」
「わかった、急いで買ってくるね！」
「ゆっくりでええよ。気をつけてな」
「うん！」
今回は彼のご好意に甘えよう。
席を立ち、彼に手を振り足を踏み出す。
気分は高揚するばかりで、ニヤケが止まらない。
「いってらっしゃい」と後方から聞こえてくる優しい声を背に、扉に手を掛けた。
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ルリ(プロフ) - 林檎さん» 林檎さま、返信が遅くなってしまい申し訳ございませんでした。私自身キュンが大好きなのでそう言っていただけるのが最上の褒め言葉です、ありがとうございます。更新が滞ってしまい申し訳ない限りですが、今後ともお付き合いいただけると嬉しいです^^ (6月1日 13時) (
レス) id: 9b3e1dd9b8 (このIDを非表示/違反報告)
林檎(プロフ) - キュン死しそうでした。素敵な作品をありがとうございます｡>_<｡お身体にお気をつけて (2023年4月14日 19時) (レス) @page26 id: 84e97ac5a3 (このIDを非表示/違反報告)
ルリ(プロフ) - まいさん» コメントありがとうございます。たくさんキュンとしていただけたみたいで嬉しいです。そしてファンとまで言っていただき恐縮です。全員分を同時進行で書いているので更新が遅くなってしまっていますが、末永くお付き合いいただけると嬉しいです^^ (2022年12月30日 15時) (レス) id: 9b3e1dd9b8 (このIDを非表示/違反報告)
まい - はじめまして！すごくおもしろくていっきに読ませて頂きました！きゅんきゅんが止まりませんーきゅんで死にそうです 笑 更新大変かと思いますが頑張ってください☆すっかりルリさんのファンになりました！ (2022年12月30日 0時) (レス) @page21 id: e5435e7bdd (このIDを非表示/違反報告)
ルリ(プロフ) - わこさん» 返信が遅くなりごめんなさい。どうもありがとうございます。 (2022年12月16日 19時) (レス) @page21 id: 9b3e1dd9b8 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ルリ | 作成日時：2022年7月16日 17時
