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レンくんの美容院は人気だ。
予約が何ヶ月も先まで埋まっているらしい。
だから急遽髪を切りたいと言ったところで、そう簡単に予約が取れるわけではない。
普通は。
「力加減はいかがですか？」
優しくて甘い声。
顔を覆った先にうっすらと映る人影。
頭皮をなぞる指の力。
上品で華やかなベルガモットの香り。
その全部が心地よくて、つい瞼を下ろしたくなる。
「気持ちいいです」
「ほんまに気持ち良さそうな声してる」
ふふっと声が降ってきて、彼が笑っているのが伝わってくる。
普段は“大丈夫です”とか無難な返ししかした事なかったけれど、本音が漏れたのはきっとその相手がレンくんだったから。
私達の他に誰も居ない静かな店内で、二人の会話と、頭皮を擦る音だけが響いていた。
予約が取れなかったのはもちろん例外ではなかったのだが、彼のご好意で開店前の早い時間においでと言ってくれた。
そして今が、約束の時間というわけだ。
髪を洗う、彼の指が優しい。
時折掛けてくれる、その声も優しい。
出会った時の彼とも違う、デートをした時のオフな姿とも違う。
仕事に誇りを持つ、プロの顔だ。
少しばかり他人行儀で寂しい気もするけれど、彼の新たな一面を見れて嬉しくもある。
「前にも思ったけど、Aちゃんて髪質いいよね。毛先までまとまってるし、なにより手触りがええ」
「そうなの？」
「今まで言われへんかった？」
「言われたことないな。あんまり美容師さんと会話しないし」
「あー、そういうタイプね」
「え！どういうこと？」
彼の発言の意味を確かめたくても、顔にガーゼを乗せられシャワー台で横になっている状態では、言葉以外の方法がない。
更にタイミング悪く「流しまーす」の声を合図に、シャワーをかけられてしまえば、もはや確認する手立てを失っていた。
シャワー音の中に混ざる、彼のフハハというご機嫌な声が、何とも言えない気持ちにさせる。
彼が笑っているのは嬉しい。
でも、どういう意味なの？
「深い意味はないよ。会話を好む方もいれば、静かなのを好む方もいるし」
「そう？」
「今日も会話少なめでいきますか？」
「え、」
安堵しかけたところでまた、胸をざわつかせる彼の言葉。
さっきから振り回されっぱなし、というか弄ばれてる？
「レンくんはいいの。特別だから」
悔しくて、そんな強気な発言をしてみる。
すると彼の笑い声が止まり、水面を弾く水音だけが聞こえ始める。
ねえ。彼は今、どんな顔をしているの？
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ルリ(プロフ) - 林檎さん» 林檎さま、返信が遅くなってしまい申し訳ございませんでした。私自身キュンが大好きなのでそう言っていただけるのが最上の褒め言葉です、ありがとうございます。更新が滞ってしまい申し訳ない限りですが、今後ともお付き合いいただけると嬉しいです^^ (6月1日 13時) (
レス) id: 9b3e1dd9b8 (このIDを非表示/違反報告)
林檎(プロフ) - キュン死しそうでした。素敵な作品をありがとうございます｡>_<｡お身体にお気をつけて (2023年4月14日 19時) (レス) @page26 id: 84e97ac5a3 (このIDを非表示/違反報告)
ルリ(プロフ) - まいさん» コメントありがとうございます。たくさんキュンとしていただけたみたいで嬉しいです。そしてファンとまで言っていただき恐縮です。全員分を同時進行で書いているので更新が遅くなってしまっていますが、末永くお付き合いいただけると嬉しいです^^ (2022年12月30日 15時) (レス) id: 9b3e1dd9b8 (このIDを非表示/違反報告)
まい - はじめまして！すごくおもしろくていっきに読ませて頂きました！きゅんきゅんが止まりませんーきゅんで死にそうです 笑 更新大変かと思いますが頑張ってください☆すっかりルリさんのファンになりました！ (2022年12月30日 0時) (レス) @page21 id: e5435e7bdd (このIDを非表示/違反報告)
ルリ(プロフ) - わこさん» 返信が遅くなりごめんなさい。どうもありがとうございます。 (2022年12月16日 19時) (レス) @page21 id: 9b3e1dd9b8 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ルリ | 作成日時：2022年7月16日 17時
