２０ ページ20
「ねえ、ちょっ。待って、」
「聞こえへんなぁ」
「むりむり、ねえ無理ってば」
「ええやん」
「良くないよ！！」
ソファに並び、目の前のテレビ画面に向かって真剣勝負を繰り広げていたはずが、予想外の展開に軽くパニックになる私を見て、彼はフハハと楽しそうに笑っている。
寝る前にテレビゲームでひと勝負しようと彼に誘われ、初心者でも出来るテニスゲームを選んでくれたおかげで序盤はそれなりにラリーになっていたのだが。
それは彼が手加減をしていたからだと気づいたのは、突然意味のわからない大技を披露し、こてんぱんにやられてしまったからだ。
私はコントローラーのボタンを精々三つくらいしか使えないというのに、彼の指さばきは鮮やかで変幻自在に動き回っていた。
「こんなの聞いてない」
「言ってへんもん」
「せめて練習させてよ」
「ええよ」
負けず嫌いとまではいかなくても、ここまで酷い負け方をするのは納得がいかないのでもう一度勝負を挑みたい。
でもむやみに立ち向かっても仕方がないので、
「教えてくれる？」
そうお願いしてみれば、目を細めたままの彼は「ええよ」と優しげに答えてくれた。
背後から手を伸ばして私のコントローラーで説明をし始める彼の顔が頬が触れるくらいまでに近づいて、手元を見なければいけないのに美しいその顔の方ばかりが気になってしまう。
瞬きで揺れるまつ毛、喋る度に動く唇。
吐息までもが肌を滑り、ドキドキと鼓動が駆け出していく。
「ねえ、聞いてる？」
「えっ、」
「俺に見惚れてないでこっち見てよ」
流し目の視線に当てられて、キュンなんて感じている暇もなく顔を引きつらせる私に、彼は半笑いで顔を伏せた。
それによって私の肩におでこが添えられ、もうゲームどころの話ではない。
彼もそれを察したのか、彼の意思なのか、手元のコントローラーをローテーブルに置き、空になったその手を私の腰へと巻きつけた。
「ゲームはまた今度ね」
「うん」
「もう寝る？」
「ううん」
「いちゃいちゃする？」
「うん」
「ええな」
ゆっくりとソファに倒されて天井を仰ぐ。
頭上に移動し覆い被されば、シャランとゴールドのチェーンネックレスが音を立てて下りてきた。
ゆらゆら揺れているのが邪魔なのか、彼はすぐにそれを外してしまう。
「目、閉じて」
ああ、好き。
れんくんが好き。
それ以外の感情なんていらない。
そう思えちゃうのは、現実から目を逸らしているから？
それでも、いいですか。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 175人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「King&Prince」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ルリ(プロフ) - 林檎さん» 林檎さま、返信が遅くなってしまい申し訳ございませんでした。私自身キュンが大好きなのでそう言っていただけるのが最上の褒め言葉です、ありがとうございます。更新が滞ってしまい申し訳ない限りですが、今後ともお付き合いいただけると嬉しいです^^ (6月1日 13時) (
レス) id: 9b3e1dd9b8 (このIDを非表示/違反報告)
林檎(プロフ) - キュン死しそうでした。素敵な作品をありがとうございます｡>_<｡お身体にお気をつけて (2023年4月14日 19時) (レス) @page26 id: 84e97ac5a3 (このIDを非表示/違反報告)
ルリ(プロフ) - まいさん» コメントありがとうございます。たくさんキュンとしていただけたみたいで嬉しいです。そしてファンとまで言っていただき恐縮です。全員分を同時進行で書いているので更新が遅くなってしまっていますが、末永くお付き合いいただけると嬉しいです^^ (2022年12月30日 15時) (レス) id: 9b3e1dd9b8 (このIDを非表示/違反報告)
まい - はじめまして！すごくおもしろくていっきに読ませて頂きました！きゅんきゅんが止まりませんーきゅんで死にそうです 笑 更新大変かと思いますが頑張ってください☆すっかりルリさんのファンになりました！ (2022年12月30日 0時) (レス) @page21 id: e5435e7bdd (このIDを非表示/違反報告)
ルリ(プロフ) - わこさん» 返信が遅くなりごめんなさい。どうもありがとうございます。 (2022年12月16日 19時) (レス) @page21 id: 9b3e1dd9b8 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ルリ | 作成日時：2022年7月16日 17時
