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物が少ないスッキリとした部屋。
掃除が隅々まで行き届いた、彼の部屋。
「コーヒーと紅茶、どっちがいい？」
キッチンに立つ彼に問われ、
「紅茶、お願いします」
そう答えれば「はいよー」と伸びやかな声が返ってくる。
ソファに座り、紅茶が来るのを待つ時間がどうにも落ち着かなくて、目線だけでキョロキョロと部屋を見渡していた。
そういえば、彼が言っていた『一緒にいるだけ』とはどういう意味なのだろう。
言葉をそのまま受け取るならば、何もせずにただこの部屋にいるだけ。
何もしないとはいえど、そもそもキスはしている。
会う度に、何度も、必ず。
深く掘り下げて考えた事はなかったけれど、そっちの方こそ一体どういうつもりなのだろう。
一般的な認識では、恋人同士がキスをするのではないのだろうか。
だけど、私と彼は付き合っていない。
それどころか、彼が私を好きなのかもわからない。
どう思っているのだろう。
聞いてみたい、否、今すぐ問いただしたいくらいに気になって仕方がない。
それが出来ないもどかしさと情けなさに、鼻の奥がツンと痛んだ。
彼を見遣れば、上機嫌にケトルからお湯を注いでいる所で、淡い湯気に霞んでいく彼の口元が弧を描いているのがぼんやりと見えた。
彼の言動の端々に好意を匂わせてきているのは、なんとなく分かる。
期待だって日に日に大きく膨らんでいく。
でも、手を出さない宣言をハッキリ出されてしまったのは、私が恋人未満だからなのかと悲しくなってくる。
胸が痛みを帯びて、泣きそうになるのを必死に堪えていると、
「どしたん？酷い顔して」
私の気持ちなどつゆ知らず、彼がサイドテーブルにカップを置きながら、爽やかな笑顔を浮かべていた。
「何でもない」
心の中を読まれたくなくて咄嗟に顔を手で覆えば、耳に届いてくる彼の楽しげな声。
「ホンマ可愛いなぁ」
近づいた声と同時に触れた彼の手が、顔を覆う私の手のひらを剥がしていく。
視界に現れる彼の優しげな眼差しは、違う痛みを胸に与えた。
キュンともギュウとも違う、不思議な感情。
「紅茶、冷めちゃうよ」
「うん」
ふわっと香る、カモミールの匂いに誘われて、意識がそちらへ逸れていく。
心を落ち着かせる効果があるのは本当かもしれない。
触れたところに流れ込む彼の体温と、目と目が見つめ合ったその瞬間。
今夜、彼といられるのなら、それでいいと。
それ以外の感情を捨てていくみたいに。
あなたに、溺れていくのだった。
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ルリ(プロフ) - 林檎さん» 林檎さま、返信が遅くなってしまい申し訳ございませんでした。私自身キュンが大好きなのでそう言っていただけるのが最上の褒め言葉です、ありがとうございます。更新が滞ってしまい申し訳ない限りですが、今後ともお付き合いいただけると嬉しいです^^ (6月1日 13時) (
レス) id: 9b3e1dd9b8 (このIDを非表示/違反報告)
林檎(プロフ) - キュン死しそうでした。素敵な作品をありがとうございます｡>_<｡お身体にお気をつけて (2023年4月14日 19時) (レス) @page26 id: 84e97ac5a3 (このIDを非表示/違反報告)
ルリ(プロフ) - まいさん» コメントありがとうございます。たくさんキュンとしていただけたみたいで嬉しいです。そしてファンとまで言っていただき恐縮です。全員分を同時進行で書いているので更新が遅くなってしまっていますが、末永くお付き合いいただけると嬉しいです^^ (2022年12月30日 15時) (レス) id: 9b3e1dd9b8 (このIDを非表示/違反報告)
まい - はじめまして！すごくおもしろくていっきに読ませて頂きました！きゅんきゅんが止まりませんーきゅんで死にそうです 笑 更新大変かと思いますが頑張ってください☆すっかりルリさんのファンになりました！ (2022年12月30日 0時) (レス) @page21 id: e5435e7bdd (このIDを非表示/違反報告)
ルリ(プロフ) - わこさん» 返信が遅くなりごめんなさい。どうもありがとうございます。 (2022年12月16日 19時) (レス) @page21 id: 9b3e1dd9b8 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ルリ | 作成日時：2022年7月16日 17時
