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暦の上では春も終わりに近づく、晩春と呼ばれる三月のある日。
日が沈み、街並は人工的な光に包まれ、行き交う人々は足速に街の景色へと消えていく様を、ぼんやりと眺めている。
私は今、一週間前に出会ったイケメン美容師、永瀬レンくんと待ち合わせをしている。
指定された駅前の有名スポットで、かれこれ十五分以上は立ち尽くしているだろう。
というのも、予定の時間よりも早く着いてしまったからだ。
彼と出会ってからちょうど一週間。
土曜日でも仕事の彼に合わせて、夜に食事をしようということになった。
派遣社員の私にとっては休日なので、この約束のために朝から入念に準備をしてきた。
お洒落な彼と並んで歩けるように、というか彼のようにお洒落になりたくて、クローゼットの中を大捜索。
ファッション雑誌と睨めっこしながらコーディネートを決めた。
いつもはシンプルな服が好きだけれど、少しでもデートっぽくなるように、可愛くなれるように、随分必死だったと思う。
「あ、」
遠くに見えた人影が、レンくんだと気づいたのは偶然なんかじゃない。
人混みにいたってわかる、彼がこちらへ歩いてくる姿に、ドキンと胸が熱を帯びたから。
その姿をじっと見つめていたいけれど、彼にも私を見つけて欲しくて、わざと視線を宙に彷徨わせてみる。
あたかも気づいていませんと言いたげに。
そして近づいてくる足音。
通行人のそれなど耳にも入らずに、カツカツと聞こえてくる一つの靴音に神経を集中させた。
「Aちゃん」
足音が止まり、頭上から降ってきたのは聞き覚えのある甘い声。
声のする方へ目線を上げていくと、目の前に涼しげな表情の彼が佇んでいた。
「レンくん」
気づかれていないだろうか。
素知らぬふりをして笑顔を浮かべる私に、気づいていないといいな。
「お待たせ」
先週よりも暖かさを増した今日、夜の冷え込みも緩和されてきたためか、スプリングコートよりも薄地の、赤いチェック柄のロングシャツを羽織る彼。
足の細さが強調される黒いスキニーパンツと、黒いスニーカー。
彼のようになりたいだなんて、おこがましかったかもしれない。
「行こうか」
心がへし折れそうになっていた私に差し出された彼の手のひらは、あまりに自然な流れで。
吸い込まれていくように自分のそれを重ねる。
一週間ぶりの彼の温もり。
レンくんにまた、会えたんだ。
上昇する体温が手のひらから広がっていくみたいに、かあっと頭の天辺までを熱くした。
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ルリ(プロフ) - 林檎さん» 林檎さま、返信が遅くなってしまい申し訳ございませんでした。私自身キュンが大好きなのでそう言っていただけるのが最上の褒め言葉です、ありがとうございます。更新が滞ってしまい申し訳ない限りですが、今後ともお付き合いいただけると嬉しいです^^ (6月1日 13時) (
レス) id: 9b3e1dd9b8 (このIDを非表示/違反報告)
林檎(プロフ) - キュン死しそうでした。素敵な作品をありがとうございます｡>_<｡お身体にお気をつけて (2023年4月14日 19時) (レス) @page26 id: 84e97ac5a3 (このIDを非表示/違反報告)
ルリ(プロフ) - まいさん» コメントありがとうございます。たくさんキュンとしていただけたみたいで嬉しいです。そしてファンとまで言っていただき恐縮です。全員分を同時進行で書いているので更新が遅くなってしまっていますが、末永くお付き合いいただけると嬉しいです^^ (2022年12月30日 15時) (レス) id: 9b3e1dd9b8 (このIDを非表示/違反報告)
まい - はじめまして！すごくおもしろくていっきに読ませて頂きました！きゅんきゅんが止まりませんーきゅんで死にそうです 笑 更新大変かと思いますが頑張ってください☆すっかりルリさんのファンになりました！ (2022年12月30日 0時) (レス) @page21 id: e5435e7bdd (このIDを非表示/違反報告)
ルリ(プロフ) - わこさん» 返信が遅くなりごめんなさい。どうもありがとうございます。 (2022年12月16日 19時) (レス) @page21 id: 9b3e1dd9b8 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ルリ | 作成日時：2022年7月16日 17時
