恋、みつけ (ページ34)

今日:3 hit、昨日:11 hit、合計:27,380 hit

ＫＡＩ＊ルート４ページ34

　
　
　
「そうだ！いいものあるんだよね」

そう言ってスーツケースから何かを取り出し、せっせと作業をしている彼の背中を、ツインベッドの片側に寝転びながら眺めていた。

いいものってなんだろう。
ワクワクするような、ちょっぴり不安もあり、そんな気持ちのまま見つめ続けていると、作業が終わったようで、彼が電気を消した。
すると部屋全体が暗くなり、この空間には月の光が差し込むだけになった。

青白く月影に浮かび上がる彼は、その月明かりさえをも遮ろうとしてカーテンを引く。
そして真っ暗になった部屋に満足の声をこぼし、先程用意していた何かのところへと足を運んだ。

こちらからはもう真っ暗すぎて何も見えない。
さすがにあれだけ念を押したのだ、変なことはしないと信じたい。

カチ。

何かのスイッチを入れるような音と同時、真っ暗だった空間に仄かな光を灯した。
天井に映し出された星々の光景。
人工的に作られた満天の星に言葉を失う。

「どう？綺麗でしょ？」

もう片側のベッドへと足を滑らせた彼が、天井を見上げて自慢げに言う。

「これ、俺のお気に入り」
「プラネタリウムって部屋でも見れるんだ」
「うん。やっぱり施設で見るのとは違うけど、家でもこれだけ見れたら十分だよね」
「うん！すごく綺麗。私もプラネタリウム好き」
「え！？ほんとに？」

驚きの声と共に彼が向こう側のベッドから身を乗り出してくる。
ドキッとして身をすくめるが、それ以上は近づかずに言葉を続けた。

「俺ね、昔から天体観測とか、星を見るのが好きだったの。それでね、子供の頃から天文学者になるのが夢だったんだけど」
「へえ、すごいね」
「大学で天文学とかを学んでいくうちに、星の楽しさを伝える仕事がしたいなって思うようになって、プラネタリウムを作る人になろうって決めたんだ」

夢を語る彼の声は生き生きとしていて、暗闇でもわかる目の輝きが頭に浮かぶ。

「そうなんだ。素敵な夢だね」
「でしょ？子どもからお年寄りまで幅広い世代の人が一緒に楽しめる作品を作りたいんだよね」
「いいね、それ。親子三代で見にいけたら家族の共通の話題にもなるし」
「わかってくれて嬉しい」

パーティーで見た大人びた姿よりも声を弾ませる今の彼の方が、二十二歳の等身大のカイトくんのような気がして親近感が湧く。
好きなものが同じという共通点もあり、なんだか少し距離が縮んだ気がした。