恋、みつけ (ページ25)

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ＪＩＮ＊ルート２ページ25

　
　
　
パチパチとキーボードを叩く軽快な音が静かな部屋に響いている。
パソコンと向き合う真剣な表情、伏し目がちに瞬きをするそのまつ毛が揺れる様をじっと見ていたいけれど、まじまじと見つめるのは失礼なので、時折視線を逸らし部屋をぐるっと見渡したりする。

今までに泊まったことのない部屋のサイズ感。
普通の部屋ではないということだけはわかる。
やっぱり社長さんともなればそれ相応のランクがあるのだろう。

パタン。

閉じられた画面と共に、「お待たせ」という声が聞こえて彼の方へと視線を戻せば、いつの間にか眼鏡を外して眼鏡ケースへと片付けようとしていた。

「ほんとにパソコンの時だけなんですね」
「そう。俺、目はいいから眼鏡要らずだし」
「え、じゃあそれ、度は入ってないんですか？」
「うん。疲れ目予防にブルーライトカットだけ」
「へえ！そんなのがあるんですね」
「スマホとかでも使えるよ。Aちゃんも付けてみる？」

彼はそう言い、片付けようとしていた眼鏡を開き直して、テーブルの向かい合わせに座る私へ掛けようと腰を浮かせた。
レンズが近づき、すうっと滑るように耳に掛かっていく。
触れた彼の指先がくすぐったくて反射的に肩をすくめた。
顔の形が違うから若干の違和感はあるけれど、キツくて入らない事態だけは回避できたようで一安心だ。

レンズ越しに視線が交わる。
少し黄色がかった視界の先で、彼が口角を上げている。

「長時間スマホ見る時とかおすすめだよ。似合うね、眼鏡」

褒められ慣れていない私は、彼の言葉がいちいちむずがゆい。
素直に受け取れず、本当かな、なんて疑いたくもなる。
けれど彼はどんな時でも、ごくごく自然に言っているような気がして。

全然わからない。
彼の本心が、わからない。

だから私は、

「あ、りがとう」

そう、答えるだけで精一杯だった。