2.狂い咲き ページ3
あの日から一週間ちょうど。
桜は美事に空を埋めた。
散った桜が一升枡の酒の上を泳いだ。
去年より煩い花見になっているのは気のせいでは無い。
今年はうちの国の幹部が全員参加している。
どうりで。
今日、Aはあまり姿を現さない。
主催ともあって忙しいのだろう。
………首相？
花見には毎年欠席するはずの首相が今年は珍しく顔を出していた。
何やらAと話し込んでいるようだ。
政治に進展があったかなにかか？
「王妃との交流は大事ですからね」
「！？」
「折角の花見で桜を無視してどうするんですか」
「はあ、エーミールかよ…飲んでるんか？」
「五合ですが」
「割と酒平気なんだな…」
「紅茶しか飲んでないと思うのは間違いですよ。ゾムさんのほうが強そうじゃないですか。一升だなんて」
「あ”ー、これは見栄やからな。ほんとはめっちゃ弱い」
「どうりで減ってない訳だ」とすかしたことを言う。
わかってんならよぉ…
「君主制はあまり良いとは思えませんが、Aさんは良い人だと思いますよ」
エーミールは突然目を細めて悲しそう笑ってに言った。
「Aさんが、ずっとこの国の王妃でいてくれれば良いのですがね。事あるごとに梅見だの宴会だの。嘸かし楽しいことでしょう」
気が狂う。
急にしんみりとした空気を送り込みやがって。
「ていうかゾムさんももっと飲みましょうよ！ほらほら！」
「ちょ、酒くさっ！お前素面のふり上手くないか！？ほんとは出来上がってんやろ！？」
「はぁ…」誰かが溜息をついた。
「二人して何やってんのよ…」
丁度良い。
さっきのことが気になっていたんだ。
「Aはここから離れんよな？この国を捨てへんよな？」
「…もう、何かと思えばそんなくだらないこと…自分のことは自分で決める。それが私の生き方よ」
「勝手なこと言わない！」とそっぽを向かれた。
随分と自由奔放な生き方だ。
「はいはい、お前には逆らえんな」
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 17人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
