■仮面とサイレンの間に■4 (ページ14)

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･その4 ページ14

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「戻りました。」

ザミーゴ「やっほ〜、おかえり子猫ちゃん。ねぇ、それがゴーシュの治療？」

組んだ腕を枕代わりにして、鉄骨の上で器用に寝転がるザミーゴ。
アリスが帰宅の声をかけると、顔を覆っていた帽子を指で押し上げて応えた。

「はい。」

ザミーゴ「ふ〜〜ん。」

頬に大きなガーゼをペタリと貼り付けたアリスを一瞥し、
ザミーゴはわずかに口をへの字に歪めた。
その処置なら俺にもできそう、と言いかけて言葉を飲み込む。

彼の機嫌が悪いのはよくあることだが、今日は少し違う。

要は、つまらないのだ。

知らない場所で怪我をして帰ってきたアリスのことが。
この程度の処置の為に俺から離れたことが。
わざわざゴーシュを頼ったことが。

でも、興味深いのだ。

ここを帰ってくるべき場所だと思っているところが。
自分を新しい主として素直に付き従うところが。
他人を疑うことを知らない無垢な瞳が。

組織の中でも特異な存在……いわば唯一無二のアリス。
興味を持ったのも、「面白そう」だからに他ならない。

そんな考えを巡らせていたザミーゴのすぐ傍に、気付けばアリスが立っていた。

「先ほど屋敷でドグラニオ様に聞かれました。ザミーゴ様との仕事はどうか、と。ですから私はお答えました。楽しいです、と。」

聞かせる気があるのか無いのか、ぽつりと話しだすアリス。
笑顔、とまではいえないがほんの少し目元を緩めた彼女にザミーゴは目を丸くした。

そして、何かを確信したように片方の口角を引き上げた。

ザミーゴ「ヘぇ〜。……子猫ちゃんさ……やっぱり面白いね。そういう表情もできたんだ。」

「やっぱり、とは？」

ザミーゴ「……俺さァ気になってたんだよ。ボスがアンタをずっと傍に置いてた理由が。」

「理由、ですか？」

アリスは分からなかった。この先彼が何を言おうとしているのか。しかし、なぜか本能的に嫌な予感が背中を冷たく走り抜ける。
オウムのように、彼の言葉を繰り返すことしかできない。

ザミーゴ「あの屋敷で、いや、ギャングラーの中で一番アンタが〝人間くさい〟だろ？だからどんな中身のヤツ(ギャングラー)が、化けの皮を使ってるのか気になってたのさ。」

「人間くさい……」

ザミーゴ「けど、さっき血を舐めてみて分かった。
子猫ちゃん、アンタ……ギャングラーじゃないンだろォ？」

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