■仮面とサイレンの間に■

●傘を持たぬ少女 ページ37

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ポツリ、と水滴が頬を伝う。





アスファルトが点々と雨に濡れていく。






グレーのパーカーにも地面と同じような染みができても、思い出したようにフードを被るだけのアリス。



建物に入ることも、歩みを早めることもしない。




ただただ無心でその雨を、全身に受け止めていた。






(雨、降ってきたのか……)








気が付けば、小雨だった雨も次第に激しさを増し、いつの間にかどしゃ降りになっていた。








灰色だったパーカーは限りなく黒に近くなり、水を吸った重いデニムが脚にまとわり付く。





びしょ濡れになりながら傘も差さず、ふらふらと街を歩くアリスの姿を、通りすがりの人は怪訝な表情で見たことだろう。






しかし、アリスは気にも留めず歩き続ける。






行くあてがないように見えて、何かに引き寄せられるように足を進める彼女と、その後ろを追う人影。






だがその足音は、激しい雨にかき消されている。






アリスは交差点近くの橋で立ち止まり、その手すりに寄りかかった。





雨に打たれて冷えきった身体。






足元を流れる激しい濁流。





身を乗り出して見つめていると、思わず吸い込まれそうになる。






(……このまま、目を閉じれば……)








？「おいっ、危ないだろ。」









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