懐古・あの面影 3 ページ5
痛いくらい真っ直ぐな瞳と今すぐ蹴り上げたい瞳に見つめられる。
……ここは話を合わせておくのが妥当だろう。
『………そう、ですね』
「ほら！」
「いや、今言わせた感満載でしたよ」
白雪さんはニコニコ笑っているが、アイツは眉をひそめ苦笑いしていた。
私は顔を横に向け、他に意識を集中させようとしていると思いがけない言葉が私の耳に入ってくる。
「うーん……でも皆言うんじゃないかなぁ…オビは優し『あ』……え？」
『前言撤回します』
「……あれ？」
「あははは。だってさ、お嬢さん」
私はそう言って笑うアイツを睨む。
何故、今笑うのかわからない。
それにこの笑い方は見たくない。
どこかつくっている気がするからだ。
昔と同じ。
あの頃と同じ笑い方。
私は目を伏せ、今度こそ二人の会話から意識を遠退ける。
どこか冷たい風が私の体を通っていく。
肩にかかった髪が風に靡き、スカートがふわりと優しく揺れた。
一定のリズムを刻む三つの足音を耳に流しながらしばらく歩いていくと、薬室の前に辿り付く。
「…よし、これで終わりかな」
白雪さんの言葉を聞いた瞬間、私は口を開いた。
『あの…』
「はい。もう行っても大丈夫ですよ」
白雪さんは私の言いたいことが分かったのか、ニコッと微笑み私を見る。
私はペコリと頭を下げると、来た道とは反対方向へと足を進めた。
「……そういえばここ最近どこか行ってますね」
オビは首を傾げ、隣にいる白雪に言葉をかける。
白雪は首を縦に振り、Aが去っていった方向へと顔を向けた。
「うん。オビにはどこに行ってるか教えないでって言われたよ」
「そりゃまたなんで」
オビが白雪に問いかけると、白雪は「うーん…」と頭を悩ませながら苦笑いを浮かべる。
「“アイツに教えたら絶対に来るので”らしい」
「……今からつけますか」
「えぇ！？」
白雪が驚いたように声を上げると、オビはへらっと笑い「冗談ですよ」と言う。
「ま、そうですねぇ……じゃあ、聞かないでおきますよ」
「……ごめん」
「なんでお嬢さんが謝るんですか」
オビがそう問うと白雪は目を瞑り再び悩んだような仕草をした。
「んー……なんとなく？」
それを聞いて再び笑うオビ。
そんなオビの様子を見て白雪も笑った。
「さ、速く仕事の報告しちゃいましょ」
「そうだね」
ガチャン…！
さっきまで賑やかだった廊下が一気に静まり返る。
冷たい風が吹き、薬室の扉の前に一枚の葉が落ちた。
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あずさ(プロフ) - 初めまして、こちらの作品を読ませて頂きましたがとても面白かったです！更新待ってます！ (2019年11月24日 1時) (
レス) id: 229f07ca39 (このIDを非表示/違反報告)
鴇(プロフ) - 美桜さん» コメントありがとうございます！待たせてしまって本当にごめんなさい…もっと楽しんでいただけるように、頑張ります！！ (2019年4月4日 9時) (レス) id: 90452de994 (このIDを非表示/違反報告)
美桜(プロフ) - 更新ありがとうございます！とても楽しみにしていたので嬉しいです！！応援しているので、頑張ってください！ (2019年4月4日 1時) (レス) id: f0f7b45004 (このIDを非表示/違反報告)
鴇(プロフ) - 新世界のゴリラ五世さん» コメントありがとうございます！とても長い間更新停止してしまい、本当に申し訳ないです…これから再開するので、再びこの作品を楽しんでいってください…！ (2019年4月1日 19時) (レス) id: 90452de994 (このIDを非表示/違反報告)
新世界のゴリラ五世 - 待ってました！！ (2019年4月1日 18時) (レス) id: 86fafd0b97 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：鴇 | 作成日時：2018年7月9日 0時
