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ここへ来たらピアノを弾きたいと思って密かに練習していた。

わたしが表だってピアノを弾くのはここでだけ。

家族に余計な気遣いをさせたくないから。

わたしの本当の父は音楽家だったらしい。

たしなみ程度には習わないといけないと祖父に言われ習ってみたらメキメキ上達した。

やっぱり血は争えないなと祖父は言っていた。

母はわたしを身ごもっていると分かると本当の父と別れ今の父と結婚した。

父は自分の子供ではないと承知の上で母と結婚した。

血の繋がりなんて関係ない。

そんな風に父はわたしを育ててくれたと思う。



「ありがとうございました。」

カウンターに戻って店員さんに声をかけた。

「いえ、みなさん素敵な音色が聴けて幸せな気分になられたはずです。」

「Aさん。」

「どうしたんですか?

」スーツから着替えた新井さんが急ぎ足で歩み寄ってきた。

「近藤さんに聞いたらこちらでピアノを弾いていると聞いたので。もう終わってしまいましたか?」

「(笑)。急いで来てもらうようなものではありませんよ?また次回でもいいですか?」

「残念です。さっきの彼・・・たぶんスーパージュニアの方は感動したみたいでしたよ?」

「誰だろう?」

「キュヒョンさんです。先ほどまでこちらでピアノを聴いていらっしゃいましたよ。」

店員さんがカクテルを作りながら教えてくれた。

キュヒョンが?

声もかけずに帰ったんだ。

・・・複雑な気持ちだな。

だけどキュヒョンにピアノを聴いてもらえて良かった。

ちゃんとキュヒョンの心に響いていたらいいな。


「Aさん。やっぱり1曲お願いします。心残りになりそうです。」

「分かりました。」

またピアノへ向かって弾き始めた。

セレクトしたのはキュヒョンの曲。


やっぱり少しでも会いたかったかな。

お互い気まずいかもしれないけど・・・。

わたしキスされたんだった。

そんな事を思い出しながらピアノを弾いた。

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作者名:るんるん | 作成日時:2018年9月25日 7時

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