近くて遠い2【完】 ページ49
Aちゃんは「良かった」と言って、
「実は、この子を少しの間預かって欲しいんです」
後ろから、ペット用のキャリーケースを手繰り寄せ、私に見せる。小窓から覗くと子猫がいた
「猫、よね？しかもまだ子猫…」
「冬花さんが猫嫌いだったり、アレルギーを持っていなければ預けたいんですが…」
アレルギーは無いし、猫は好きだ。それを伝えると、少しだけ嬉しそうな表情をした
「ちゃんと躾けてますし、爪の手入れもしているので大丈夫です。餌もありますし」
子猫を抱きかかえて補足するように言った。子猫の方も相当懐いているようで、Aちゃんから離れようとしない
「コロナって言うんです。人懐っこいのですぐに馴れますよ」
言いながら、私にコロナを渡す。クリクリとした好奇心旺盛な瞳が可愛い
「でも、何で私に」
純粋な疑問を聞くと、Aちゃんは言いづらそうにしたが、口を開いた
「私、暫くこの町から離れるんです」
「離れるって、お引越し？」
戸惑いながら聞くと、首を振った
「行くところが出来たから…それにいつまでも足どめをくらっている場合じゃないんです」
どうして？聞きたいことは沢山あったが、彼女の決意を込めた声がそれを許さない
「でも、ご両親は、」
言ってから後悔した。彼女にこの質問は禁句だった
慌ててAちゃんを見ると、あまりに気にして無さそうだった
ダメだなあ、私の方が年上なのに
「だけど、それじゃあ太陽くんも」
太陽くんにはAちゃん以外、お見舞いは訪れ無かった。
それに、Aちゃんと話している時の太陽くんは、いつもなら見ないような表情をしていたし、Aちゃんも楽しげだった
私の言葉に彼女はこう返した
「太陽だって子供じゃないし、私もそうです」
その時の表情は、近付いたと思っていた距離を遠ざけた
無駄だ、と確信した。きっと何を言ってもAちゃんが考えを変えることは無い
むしろ、私が彼女を困らせている
情けなく思う。私は大人なのに
でも…大人なら
「分かった。この子は私が責任をもって預かるから、ちゃんと帰ってくるって約束して」
Aちゃんは一瞬だけ戸惑いを浮かべたが、すぐに頷いた
(ところで、太陽くんには言ったの？)
(いえ、後が怖いので。いや、面倒臭い)
(あらそう…)
(太陽には内緒で)
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月奏(プロフ) - 天晶さん» ありがとうございます！番外編、楽しみにしてください！ (2015年6月29日 17時) (
レス) id: 1ad6dffea3 (このIDを非表示/違反報告)
天晶(プロフ) - 初コメ失礼します。とっても面白かったです！主人公の心情描写の書き方といいますか…読み応えがあって良かったです！番外編、楽しみにしています。 (2015年6月29日 17時) (レス) id: abbd78fe76 (このIDを非表示/違反報告)
月奏(プロフ) - ありがとうございます！暫くは番外編ですが、楽しみにしていてくださると嬉しいです (2015年6月29日 0時) (レス) id: 1ad6dffea3 (このIDを非表示/違反報告)
さやか(プロフ) - 続きがめちゃくちゃ気になります！続編も、頑張ってください！革命編完結、おめでとうございます！そして、お疲れ様でした！！ (2015年6月29日 0時) (レス) id: 4f30a84575 (このIDを非表示/違反報告)
月奏(プロフ) - areruさん» ありがとうございます！ (2015年6月15日 21時) (レス) id: 1ad6dffea3 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：月奏 | 作成日時：2015年5月24日 10時
